人口約5万人の兵庫県小野市では、今年度の学校教育課予算が15年前の約3倍となる約2億2000万円にまで増額。この実現を支えたのが市長の方針であり、それに恥じない教育改革を進めていこうと考えている。
ICT環境整備については、小野市型ICT教育による「学力向上と改革」を目的に、「いつでもどこでも誰でも」使える環境を目指し、小中学校全183学級に、プロジェクター、書画カメ小野市型ICT教育で学力控除目的に教育改革―兵庫県・小野市教育委員会ラ、ノートPCを整備。タブレット端末については、平成24年度から整備を開始した。
書画カメラは、国語辞典や分度器、児童生徒のノートなどをプロジェクターに投影して説明したり合唱コンクールの練習で自分たちが歌っている様子を見ながら練習したりなど、日常的に使われている。スムーズな導入・活用において重要なのは、目的意識の共有などの「合意形成」だ。
平成20年に「学力向上推進委員会」を設置し、3年計画で機器関連を導入。全学級にプロジェクターと書画カメラ、全教員にノートPCを配備した。予算は限られており、不足したものは工夫して確保。機器の収納用カートは、教員の手作りモデルを基に地元の建設会社に依頼、共同購入などで確保した。教員研修は整備を見越して平成20年から開始。学力向上推進委員会で計画・推進している。
研修のキーワードは「持続性」と「共有」だ。自立を促すことを目的としたリーダー育成を主眼にし、7講座を3年間実施。そのうち5講座は当初外部講師が担当していたが、現場の実践の充実に伴い、外部講師による研修は3年目には2講座になった。このほか、市のICT教育研修会(講師は教員)、校内研修(全員参加研修と希望参加研修を用意)などで持続しやすい仕組みを作った。研修では「皆がどのようにICT機器を授業で活用しているのか」も共有。活用事例を徹底的に集め、教員1人1授業1事例の提供を依頼した。平成21年度は262事例、22年度は295事例集まり事例集をまとめた。事例集は教員のICT教育に取り組む意欲の大きさを示すものとなった。
タブレット端末については、特別支援教育のための重要なツールとして位置付け。小野特別支援学校では児童生徒1・6人につき1台相当数を整備し、特別支援の児童生徒が「状況把握しやすく主体的に動き、関わり合うことができる環境」として提供している。
また、脳科学者・川島隆太教授(東北大学)を招き、年1回講演会を実施。脳科学の知見を基に「16か年で教育する」考えで学力向上などに取り組んでいる。川島氏から得る科学的な知見やメッセージは、学力向上のきっかけとなるモチベーションや予算確保のためのエビデンスとしても役立っている。
脳科学的には、家族とのコミュニケーションが多いほど、児童生徒に目的意識や探究心が育まれる。また、目的意識や探究心は、積極的な学習態度や自主的な学習習慣と相関関係にあるという点を保護者に伝えている。
同様に、ICTを活用した教育は、これにより目的意識や探究心が育まれるか否かで評価していく。川島教授からは、「TVを見ている状態は脳が休んでいる状態。たとえ教育番組の視聴であっても、見ながらメモを取るなどの活動を盛り込むなど工夫が必要。ICT活用の場合も配慮を」とアドバイスを頂いており、この観点も含めて検証していきたい。
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【2013年11月4日】
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