第11回教育委員会対象セミナー東京 タブレット端末・電子黒板・校務の情報化

 7月9日、第11回教育委員会対象セミナー「校務の情報化の推進とICT機器の整備計画」(主催=教育家庭新聞社)を東京都内で開催した。学習者用端末の活用や校務の情報化に関心や課題を持つ教育関係者が多数参集した。次回セミナーは8月6日、仙台で開催を予定。

日常的なICT活用 目標に全教室整備―柏市立教育研究所 指導主事 佐和伸明氏

教員のICT活用力86・3% デジタル教科書活用率100%に

柏市立教育研究所 指導主事 佐和伸明氏 柏市では平成18年に全小・中学校の全普通教室にPC2台、プロジェクターと実物投影機各1台、高速LANの敷設、各学年に電子黒板1台の整備を完了。さらに平成22年には各校1台のプラズマ型電子黒板を設置している。これらの環境により実現する授業について児童生徒を対象にアンケートを行ったところ、「授業が好き」「ICTを活用した授業はわかりやすい」と答えた児童生徒の割合はほぼ一致しており、特に小学校中・高学年では「わかりやすい」が9割と高く、成績上位校ほど、ICTを活用した授業がわかりやすいと答える割合が高い。

  ところが教員のICT活用頻度は、ほぼ毎日使用しているのは研究校ですら5割程度であった。「整備は完了した、子どもも喜び学力も上がる。なぜ教員はもっと日常的に活用しないのか。児童生徒1人1台の端末導入に着手するまえに、ここを解決するステップが必要なのではないか」と考えた。

  教員がICTを日常的に使わない理由については、(1)設定に時間がかかり準備時間が足りない、(2)ICT機器の持ち歩きが煩わしい、(3)コード類が危険、などが考えられることから、平成24年、新設校(モデル校)1校、リプレイス校25校(小学校9校、中学校16校)でプロジェクターの常設化、無線LAN化を実施。小学校は電子黒板機能付き超短投影プロジェクターを黒板上のレールに設置し、書画カメラはワイヤレスとした。また、中学校では天吊りプロジェクター、無線アクセスポイントを設置。特別支援学級には50インチのプラズマ型電子黒板を全教室に設置。12年前に柏市で設置したプロジェクター(2500lm/10Wスピーカー付/WXGA)と同レベルのものを導入すると、値段はいまや10分の1以下。早期の整備が今回の予算確保に役立ったと話す。

  その結果、実験小学校10校における教員のICT活用指導力が86・3%まで伸びた。さらにモデル導入校では指導者用デジタル教科書の活用率が100%になった。

 柏市では24年より指導者用デジタル教科書を導入している。しかし導入前の意識調査では、デジタル教科書を利用したいと強く思う教員は5%に過ぎなかったという。ところが導入時研修を行ったのち同様のアンケートを行うと、「積極的に利用したいと強く思う」が70%にまで伸びた。「教員の情報不足を補うための研修の充実と工夫が必要」と考え、導入校に対して全員参加の出前研修を2回、夏季休業中には自由参加の研修も実施している。その結果モデル校では、「ほぼ毎日使用する」教員が8割に増えた。今後は、日常的なICT活用が学力向上につながるという仮説を検証していく考えだ。

  なお児童生徒1人1台の端末活用については、学校で40台とグループで1台の活用について実験校により検証中。

【2013年8月5日】

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