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新年度が始まると、頭に浮かぶ苦い思い出があります。
新1年生の給食が始まって2、3日した時のことです。出張先にいた私に、教育委員会の学務課から電話の呼び出しがありました。電話口に出ると開口一番「いったいどうなっているのですか。きちんと除去していなかったのですか。もし、命に関わることになったらどうするつもりですか」と金切り声でまくしたてられ、何が何だかわからない中、「除去」と「命」というキーワードからアレルギーのことだと知り、頭の中が真っ白になってしまいました。
給食後の昼休みに、校庭で遊んでいた1年生男児の具合が突然悪くなり、アナフィラキシー症状様で救急車にて病院に運ばれたとのこと。報告を受けた教育委員会は、給食対応の確認をするために連絡をしてきたのでした。急いで帰校し、男児に引率した養護教諭の帰りを待ちました。
戻った養護教諭の話では、症状が落ち着いたので迎えに来た母親と帰ったそうです。診察・検査によると、動物の毛のアレルギーで、食品ではないという結果でした。もちろん保護者から届けも出ておらず、母親も初めてのことで驚いてしまったそうです。
最近、食歴が浅く給食で初めて食べる食品が多いという児童が増えているそうです。その事もあって、突然給食でアレルギーが発症、発見されて、大騒動になることがあるのだとか。 ひとつの学校でアレルギー対応の児童が40名近くいるという話を聞くと、給食室はどんな毎日を送っているのだろうかと心配になります。そうでなくても、食中毒予防に最善の注意を払っている給食室は緊張状態です。
対応のポイント
対応マニュアルは文部科学省や各自治体から出ているので、そちらを参考にして下さい。ここでは、マニュアルの狭間にある具体的な事柄について私の経験上からピックアップしました。
1.新1年生が重要「注意喚起と面談」
保護者説明会では、「アレルギーはいつ起こるかわからない、献立表をチェックして初めての食品は、事前に食べさせるなど色々な食品を体験させることが大事」と注意喚起。対応希望者との面談(顔合わせ、対応内容・方法等確認、相互理解)はなるべく入学式の日に行い、保護者の来校の負担を減らす。
2.児童・生徒本人の自覚を促す
新1年生のみでも良いので、登校時に給食室に立ち寄り、給食内容の確認とあいさつをすることにより食への関心と感謝の気持ちを引き出す。
3.周知と理解−担任・養護教諭・栄養士の連携
アレルギー児がいるという周知だけでなく、アレルギーのメカニズムを伝え、理解へ結びつけることにより、差別感をなくし給食時間の協力体制を築くことができる。学級活動にて関連授業を担任・養護教諭・栄養士行うことにより、一層理解が深められる。
危機管理体制をシミュレーション
避難訓練と同様にショック症状が出た時の対応策を講じ、訓練を行うことが重要。あってはならないことだが、事故後の対応を間違うと大事に至ることがあるので、誰がどう動くかきちんとシミュレーションを。
5.小さなことでも「報・連・相」
書類を取り交わしていても漏れや確認事項が出てくるので、保護者とはまめに連絡をとり相談すること。
例えば、こんなことがありました。給食室から「ある食品にアレルゲンがエサで使われているという表示がありました、除去しますか」と。献立は魚の加工品の主菜でしたので、急になくすわけにはいかないので、急いで保護者に連絡をとった経験があります。
このように、思いもかけないことがあり、給食室でよく見つけてくれたと感謝しました。保護者も初めてのことが多いので、一緒に考えて答えを出していくというスタンスが大切だと感じています。
大留光子=昭和53年より東京都内4区を経て平成21年度に栄養教諭として江戸川区に勤務。25年3月退職。現在は、学校給食研究改善協会調理講師の他、学校給食Web(www.okayu.biz/)」のディレクターを務める。
【2016年4月25日号】