さあ、夏休みです。4月から始まった給食は、回数にすると約70回。すべてのお皿が空っぽで返ってきたでしょうか。残菜ゼロの日が毎日続くのは「稀なこと」と言われます。見方を変えれば「残菜ゼロは、量が足りていないのではないか、少なすぎるのではという疑問がある」とは、ある行政の給食担当係長の弁です。残菜で悩んでいた私は、その言葉に救われた思いがしました。
特に、中学校は小学校に比べると、給食時間が短く量が多いこともあり「残菜ゼロ」は、大きな課題です。「食べ残し」をテーマにした、ある2つの中学校の実践を紹介します。
【事例1】食べ残しを考える
生徒の食生活はコンビニや外食を利用する機会が増え、野菜の摂取量が心配されます。給食の残菜を見ても野菜が多く、その摂取不足は顕著です。不定愁訴を自覚している生徒も目立ってきました。この授業は生涯にわたって健康な生活ができるよう、自らの食生活を見直し、改善していこうとする態度の育成を目指したそうです(2年生学級活動)。
レーダーチャートで給食 と自分の食事を見て、食 のバランス指導 |
野菜不足からおこり得 る状況を示して指導 |
授業内容:導入で、自分の生活を振り返りチェックシートに記入します。健康状態に関心を持ったところで、栄養士が昨日の給食献立の確認をします。そして、残菜量を提示し、一番残菜が多かった料理「サラダ」に気づかせます。給食だけでなく、外食やコンビニ弁当等についても、レーダーチャートを用いて、野菜を抜いた場合の栄養バランスの比較を行います。野菜を食べないことで起こり得る不健康症状を示し、野菜の必要性についての理解を深めます。まとめに、自らの食生活を見直し、健康的な生活を送るためにはどうしたらよいかチェックシートに記入して、授業を終えました。
【事例2】残菜の行方を考える
体育館での学年一斉授業(学級活動)で「ごみの行方」に着目して環境問題という切り口で授業が行われました。
集められた残菜 |
授業内容:導入は、午後の給食室の様子のビデオや残菜の写真を見せます。舞台上に残菜に見立てた(中身は小麦粉など)が入った大きなポリバケツを置き、代表の生徒にその重さを感じてもらいます。学校のごみや給食の残菜はリサイクル業者の手に渡りますが、ここで発生するのが処理代。この金額を給食何人分(または、この学校の給食何日分)と置き換え、より身近な問題ととらえます。
どうしたら、残菜が減らせるかワークシートに記入後、ディベート形式で話し合いをします。意見が出ない場合は、強硬派、悲観派、無関心派の意見を教員が述べ、賛否を問います。最後に栄養士が、給食室での野菜くずを減らす工夫や水分をきるなどごみ減量に努めていること、なにより給食を残すことによって損なわれる身体の健康について触れ、残さず食べることの重要性を訴え、生徒は自分の行動をワークシートに記入します。
給食の残菜は社会問題に発展したこともあり、今や無関心ではいられない問題です。中学生がちょうど理解しやすい年代だと思います。
大留光子=昭和53年より東京都内4区を経て平成21年度に栄養教諭として江戸川区に勤務。25年3月退職。現在は、学校給食研究改善協会調理講師の他、学校給食Web「おkayu(www.okayu.biz/)」のディレクターを務める。
【2015年7月20日号】