今回は中学年の3・4年生へ向けた給食指導を紹介してもらいます。タイトル脇の給食は、筆者の大留先生が6月に提供したことのある「鮭ちらし、かきたま汁、冬瓜のだし煮、人参のたらこきんぴら、メロン、牛乳」です。
6月は食育月間。参観日など、公開授業なども組まれる時期です。私はこの機を捉えて食育活動へのご理解をと思い、「味覚の授業」を公開していました。
かつお節・昆布・煮干しを味わった後ひみつのだし汁を試飲した |
そもそも「味覚の授業」は、フランスの「味覚の一週間」を継承したもので、日本味覚協会会長内坂芳美氏によって日本に広められました。15年ほど前に内坂氏の講演を聴き、給食や食育が味覚の土台を作ることに大きく影響すると考えていた私は、さらに味覚を育てることの大切さを知り、3年生での実施を決めました。
味覚協会のマニュアルによると「味覚の授業」の対象は、10歳前後の中学年で実施するのが望ましく、内容は味の基本(塩味・甘味・酸味・苦味)の体験と五感を使った味わい方を知るというものです。授業には味覚協会に登録されているシェフをお招きするのがきまりでしたが、私は給食室の調理師さんをシェフとして、手作りケーキを授業後半に届けてもらい、五感を使ってケーキを食べ中に入っている果物を当ててもらいました。
また、塩と砂糖の関係を知らせたいと、小豆を煮て砂糖だけで味付けしたものと最後に塩を使ったものとの味比べをまとめにしたこともあります。塩を入れた方がおいしいと答えるものと思っていましたが、児童達は砂糖だけの方がおいしいと感じたようで、甘みを引き立たせる塩の使い方を学んできた私には驚きの結果でしたが、塩や砂糖を生のまま味わうことがあまりない児童達は、刺激的な体感をし、味わって食べるとおいしい世界が広がることも体験したようです。
「味覚の授業」を5年ほど続けた頃、この枠を他の学年にも広げたいと考えました。2年生で野菜の味を体感する「野菜のソムリエ」を、4年生では料理の基本である「だし」を味わう「味覚の授業」を取り入れました。かつお節・昆布・煮干しをそのまま味わった後、ひみつのだし汁を試飲して、どのだしが使われたかを考える授業です。
ひみつのだし汁というのは先に登場した3つ(かつお節・昆布・煮干し)のだし汁です。授業当日の給食は、いずれかのだしを使った汁物にして給食時間が授業の確認と生活化の場となるよう心掛けました。味覚の土台を広げ、味わう心を育てる試みです。
大留光子=昭和53年より荒川区他3区を経て、平成21年度に栄養教諭として江戸川区に勤務。平成25年3月退職。現在は、学校給食研究改善協会調理講師のほか、学校給食ウェブサイト「おkayu(http://www.okayu.biz/)」のディレクターを務める。
【2014年6月16日号】