赤飯、松風焼き、すまし 汁、紅白なますなどを使 った卒業祝い献立 |
9回にわたり、実践事例を中心に食の学びを紹介してきましたが、10回目は今年度のまとめとしたいと思います。
学問を教える時、学力の差が影響し理解度に課題があるように「食教育」にも、食体験や食歴が大きく影響し受け手の反応は多様です。それは小学生も中学生も同じであり、一斉指導だけでは伝わらないことも多くあります。指導者は、個々の状況を把握して対応することが大切であり課題です。
例えば、給食時間の取り組みとして発行している学級向けの「お便り」は、給食の作り手側からの一方通行となりがちです。その日の給食についての情報を送るだけではなく、食べた児童生徒、教員の声を集約することも大切です。なぜなら、それが給食の評価につながるからです。給食が教育的意義を持つのであれば、その教育的効果を把握する必要があります。
私は児童の声に耳を傾けるため、「お便りポスト」の設置や4年生との給食交換ノートを試みました。中学校勤務の仲間は、学級向けお便りに返信スペースをつけ、返信を募りました。その折、校長先生から次のような示唆を受けたことで、とても勉強になったと言います。私にも足りない部分でした。
栄養教諭となり、様々な授業で 児童とふれあってきた執筆者 |
給食の配膳を確認。一つひとつが 食の学びとなる |
●献立により返信数に違いがあったか
●返信数をクラス別に集約してみたか
●返信内容・数と残滓との関連はあったか
●生徒の声から食体験の違いを読み取ることができたか
「作り手側の思いを一方的な発信にせず生徒の返信を受けたのはよいが、それを『分析』することが大切。『おいしい』との返信で満足することなく、生徒が生活にどう生かしているかまで捉えること。同じものを全員が食べる給食だからこそ、親とのやり取り・食体験の違いが表れてくる、それをどう言葉で表現してくるかを読み取り、その声を大事にして次に繋げる手立てを考えることも必要」との助言を受けたそうです。
食べることは生きること、給食は心と体を育てます。味覚の土台を築く成長期にいろいろな味、食品、料理を体験してもらい「酸いも甘いも噛み分けられる味な人」になってほしいと思っています。10年後20後に自らの健康を守るため、正しい食物選択ができ、QOLの高い生活を実現できる人であってほしいと願っています。
食育は、学校だけでも家庭だけでも実を結びません。児童生徒に関わる全ての人が、生きる術の一つとして、また「和食の心」も含めてことあるごとに伝えていくべきものなのかもしれません。ただ食べさせるだけの「食」ではなく、食べる側に立って今必要としているものを伝えるべく、心を込めて調理する「食」こそが食育(食教育)なのではないでしょうか。
大留光子=昭和53年より荒川区他3区を経て、平成21年度に栄養教諭として江戸川区に勤務。平成25年3月退職。現在は、学校給食研究改善協会調理講師のほか、学校給食ウェブサイト「おkayu(http://www.okayu.biz/)」のディレクターを務める。
【2015年3月23日号】