埼玉県立大宮中央高等学校(斎藤菊枝校長)は、県内で唯一の公立の通信制・定時制の独立校であり、学年制によらず、生徒は履修する教科・科目ごとに単位を認定され、それぞれが自分で組んだ時間割りで学ぶ。学校図書館には、授業の空き時間を過ごす生徒たちが訪れる。そこには静かに本を読んだり、調べものをしたり、自習する生徒たちの姿があった。
小林功司書教諭(左)と保かおり学校司書 |
学校図書館入口。取材時は七夕の笹飾りがあった |
生徒たちの作ったPOP |
通信制と定時制のみの県内唯一の公立高校
大宮中央高等学校には次の3つの課程がある。
@通信制の課程(生徒数約4000人)は主に家庭で学習し、同校ほか4つの協力校から1校を選んで、週1回スクーリングを受ける。1年ごとに単位が認定される。
A単位制による通信制の課程(約300人)も主に家庭で学習し、同校で週1回のスクーリングを受ける。
B単位制による定時制の課程(約900人)は週5日昼間に登校して学習する。AとBはいずれも半年ごとに単位が認定される。
他の学校からそれぞれの事情で転編入してくる生徒も多く、同校入学後に通学スタイルに合わせて、@〜Bを転籍することも可能だ。
Bの定時制の課程では、生徒が自分自身で時間割を組み立てる。転編入する前に在籍していた学校で取得した単位も認められ、自分に必要な単位のみを取得するため、生徒一人ひとりの時間割が異なるのだ。学年制ではなく、単位取得の状況で卒業年次が近い生徒ごとにクラスがまとまり、進路指導などが行われる。
生徒と教員が利用する学びと情報提供の場
校舎は通信制と単位制で分かれており、学校図書館は単位制校舎にある。入口にはクリスマスやハロウィンなど季節に合わせた装飾や関連した本、月替わりの展示などを行っている。生徒たちが行き交う1階にあることもあり、保(たもつ)かおり学校司書が飾り付けをしていると、生徒たちが自然に声をかけてきたり、手伝ってくれたりするという。取材時は七夕の笹飾りがあり、生徒や教員が願い事を書いた短冊がいくつもあった。
埼玉県の県立高校にはすべて学校司書が常勤で配置されている。同校でも保学校司書が常勤し、月〜金曜日の生徒の登校時間に合わせて開館している。
生徒たちは自分の受ける授業と授業の空き時間に利用する。静かに過ごしたり、調べものをしたり、自習したい生徒たちにとって大切な場所だ。友だちとの談話を楽しみたい生徒には別に生徒ホールも用意されている。
学校図書館には教員も多く訪れ、生徒と教員が同じ図書資料を手にすることも多い。
蔵書数は2万9785冊、毎月約100冊の新刊が入る。他に雑誌25誌、新聞4紙。漫画も受け入れており、歴史や倫理、生活保護などの堅いテーマでも、漫画は分りやすく楽しく読めるのでよく利用されているという。
学校図書館内で過ごす生徒が常にいるため、授業で訪れて一斉に利用することは難しい。一方で通信制、定時制共にレポート課題があり、そのための資料を探す生徒が訪れる。小林功司書教諭による国語科の授業の場合、作家の年表作りや、故事成語のいわれを調べる、といった課題だ。
単位制による課程は入学の機会が4月と10月の2回あり、学校全体のオリエンテーションも年2回実施される。学校図書館の使い方もこの中に組み込まれ、1回につき約15分、配架のしくみや読みたい本のリクエスト方法などを紹介する。
学校図書館の本が生徒と生徒を繋ぐ
同校では委員会活動がなく、図書委員もいないが、生徒がイラストとコメントを書いた本の紹介POPがあった。ある日「この学校図書館には本のPOPはないの?」と声をかけてきた生徒に、保学校司書が勧めたことがきっかけとなり、その生徒が作ったPOPが飾られた。さらにそれを見た別の生徒が「自分も書きたい、美術部なので絵も描きます」と、また新たなPOPが完成し……と増えてきたという。
同校ではショートホームルームもなく、担任と学級全員が顔を合わせるのが年に2回のオリエンテーション期間のみ。「生徒を大人として扱い、生徒との接点が少ないと感じることもある」と保学校司書。「でも本と学校図書館を通じて、点(生徒)と点を線で繋げられたら」と考えているという。
【2017年7月24日号】
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