連載

学校図書館訪問記(2)相模原市立 鵜野森中学校編(神奈川県)

情報収集力育む窓口に 授業での活発な利用で 生徒に探究力をつける

村山正子 司書教諭
村山正子 司書教諭

各教科での学校図書館の活用が重視されるようになった。そのためには学習・情報センターとして、その機能を高めることが必須と言える。相模原市立鵜野森中学校では本・新聞・インターネットなど多様なメディアを使うことでそれに対応している。2013年「学校図書館賞」(主催・日本学校図書館振興会、(公社)全国学校図書館協議会)を受賞。高い評価を得ている。

■各教科で利用が浸透

鵜野森中学校の学校図書館稼働率は54%(2012年)で、授業2時間の内1時間以上を利用している計算だ。小学校のように「図書の時間」はないので、各教科の授業活用での数字だ。学校図書館のみならず、教室に図書資料を運び授業を行うことも多い。

同校に赴任して7年目となる村山正子司書教諭は「中学校だからこそ学校図書館は教科で使われないといけない」と考える。着任当初は学校図書館の情報資料の整備を中心に取り組んだ。一方で国語科教諭で担任も受け持っていた村山教諭は、所属学年の「総合的な学習の時間」に学校図書館を使う計画を立てて実践した。校外学習での事前学習の下調べやまとめ作成などの計画を立て、学年全体で実践。それが徐々に全校へと広がった。

活用の拡大に当たり村山教諭は「〇〇の授業で図書館を使ってこんなことをやってみませんか」といった声を教員に積極的にかけている。教員として経験年数を経たこともあり、各教科の特徴を捉えていることが、授業の提案につながっている。

■学校司書との連携

学校図書館
NDCで分類された新刊コーナーもある。普通教室の広さの隣室があり、2クラス同時の授業が可能
学校図書館
PCと資料のコーナー
学校図書館
図書館に向かう廊下には新聞の切り抜きが掲示され、関連書籍も展示。生徒の興味を誘う

同校で各教科の授業で使う情報資料の準備や生徒の支援は「学校司書(相模原市では図書整理員)」が活躍する。司書教諭と授業者の打合せのあと、必要な資料や授業での支援の方法について学校司書と相談する。年間指導計画だけにこだわらず、授業の進度や生徒の状況に臨機応変に対応し、教員が気軽に図書館を使えるよう努めている。

「司書教諭は授業のアイデアを出したり、学校図書館の使い方を考える。どこを調べれば疑問が解決するのか、といった資料については学校司書が専門。司書教諭と学校司書がそれぞれ専門の力を発揮することで、学校図書館の授業での活用が発展する」(村山教諭)。

学校司書は週に2〜3日、9時〜15時の勤務。本の貸し出しなどは、図書委員会(同校では広報委員)の生徒が担う。「授業の調べ学習で図書館の資料を使うことで、"資料価値"に気づいていく。だから生徒は本を丁寧に扱い、書架がさほど乱れないのでは」と村山教諭は分析する。

■新聞等の資料を活用

各教科での図書利用が活発になるにつれ、購入する本も以前の読み物中心から調べ学習に必要なレファレンスブックなどが増え、変化しつつある。ただし、相模原市の中学校の年間図書購入予算額は、1校当たり約75万円(全国SLA調べ)と特別多いわけではない。

同校では公立図書館からの団体貸出の利用や新聞・雑誌の切り抜きも積極的に活用している。各教員も常に学校図書館を意識し、新聞や旅行先で手に入れた資料などを持ってきてくれる。

館内の生徒用PCは2台。Webでの検索と過去の新聞記事を検索できるデータベースを実験的に利用している。

各メディアの特徴について村山教諭は「図書資料は信頼性が高いが、新聞・雑誌のほうが情報が新鮮。Webは不確実な部分もあるが、様々な情報を得られるので、確かなものを選ぶ指導が必要」と位置づける。

「中でも新聞は、同じ発行日でも各紙を比較し視点の違いを知ることができ、過去のことではないという実感が得られ、物事の広がりと深さが学べる。様々なメディアを同時に使い、それぞれの特質に応じた使い分けができるようになって、卒業後も情報に踊らされないようになって欲しい」と話す。

■本当の"力"をつける

各教科に対応し生徒らの多様な興味に応えることは重要だが、全ての資料を学校図書館だけでヨえることは現実的ではない。村山教諭は「学校図書館の中だけで完結するのではなく、知りたい情報がどこで得られるのかをサポートする"窓口"として機能するべき。自分の力で見つけ、考えられることが、本当の"力"なのではないか」と語った。

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【2014年9月15日号】

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