連載:親子で楽しむ日々の新聞活用 71回

夕刊の意義と役割を見直そうー全国新聞教育研究協議会顧問・鈴木 伸男ー

新聞を読む習慣を身につけて読者がニュースの価値を読みとる

夕刊とは、朝の発刊に加えて夕方にも発行する新聞を指します。朝刊は、午後12時頃〜午前0時頃のニュースを伝え、夕刊は午前中のニュースを掲載します。どちらも同じ12時間の出来事を対象にしているのに夕刊の紙面(ページ)数は朝刊の半分以下しかありません。

平成29年7月18日付の朝日新聞・夕刊では、105歳で旅立った生涯現役の医師・日野原重明さんの訃報記事が一面のトップ記事として、3分の1のスペースを割いて掲載されていました。朝刊の場合、訃報でこのような扱いをされるのは皇室と現職の総理大臣などごく限られた人だけです。

新聞に掲載される活動や行事などは、人々が就寝する夜中の時間を含む午前よりも午後の方が圧倒的に多く、午前中に行われるイベントは午後を跨ぐことが多いといいます。このようなことから夕刊に掲載される記事は少なく、紙面数も少なくなるのです。そのため、夕刊は朝刊と比較すると意義や役割が薄く見られてきました。
同年8月4日付けの全国紙・夕刊には「第3次安倍第3次改造内閣」の一覧が掲載されましたが、翌日の朝刊にも同じ記事が掲載されていました。二度も掲載した理由は、全国紙でも一部地域では夕刊を廃止しているためです。

近年、夕刊を休止する新聞社が増えています。平成27年2月12日に毎日新聞が5万号を数えたことについて報道した全国紙はありませんでしたが、「中国新聞がこの年の4月末で夕刊を休止する」というニュースは多くの全国紙で取り上げられました。初の5万号より夕刊休止の方が新聞社にとって大きなニュースだったわけです。

夕刊の発行が一般化したのは20世紀に入ってからです。当時は読者に新聞が届くまでに2倍以上の時間がかかったことから、早くニュースを伝える手段として発行に踏み切ったのでしょう。このことは今の夕刊にも言えることです。

しかし実際は、いつも世界のどこかで大きな出来事が起こっています。グローバルに捉えれば日本の夕刊に掲載できるニュースは事欠きません。夕刊には世界の現状とその解説などをたくさん掲載して欲しいものです。一部の新聞社では、家庭において父親が出勤時に朝刊を持っていく場合が多いことを加味し、夕刊は主婦などを意識して編集しているそうです。

多くの人に新聞を読む習慣が広がることを願うばかりです。新聞がなくなったら、インターネットの情報に惑わされ、「真偽」「正誤」の見極めもできなくなってしまうでしょう。

 

【2017年8月21日号】

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