学びを支える図書多彩に<第47回「学校図書館賞」・第19回「学校図書館出版賞」>

6月11日は「学校図書館の日」。これを記念し、第47回「学校図書館賞」と第19回「学校図書館出版賞」の表彰式が6月2日都内で開催された。鳥取大学附属特別支援学校による、知的障害のある児童生徒のニーズに応えた取組が学校図書館賞として表彰された。また学校図書館出版賞を受賞した出版企画は文学・植物学・美術・災害/防災、の4つの分野にわたっており、学校図書館に向けた出版物のジャンルの幅広さと充実が伺えた。
(主催=公社・全国学校図書館協議会、日本学校図書館振興会)

特別支援学校の「知の拠点」に

(公社)全国学校図書館協議会・銭谷眞美会長は、「学校図書館賞と、学校図書館出版賞は表裏一体。学校図書館を活用した学びは優れたメディアに支えられおり、今回の顕彰を通じて広めていきたい」と挨拶した。

視聴覚ライブラリー
鳥取大学附属特別支援学校ではさまざまなメディアが充実

「学校図書館賞<実践>の部」で、学校図書館賞と村松金治賞を受賞した鳥取大学附属特別支援学校の事由は、「一人一人のニーズに応じる『知の拠点』としての学校図書館をめざして〜知的障害特別支援学校の挑戦」。特別支援学校が学校図書館賞を受賞するのは今回が初めて。受賞者発表会では、同校の平成22年度以降の司書教諭と学校司書の協働による実践を発表した。特別支援学校の中でも知的障害の児童生徒は、学校図書館や図書資料の活用について「文字が読めないから内容理解が難しいのではないか」と思われがちであり、実践が積み上がらない状況がある。全国には知的障害特別支援学校で学校図書館未設置校が2割存在している。

そうした中、主体的な子供を育てることを目指す同校では、知的障害のある子供にも文化や情報を保障するための活動の拠点として、学校図書館の充実に力を入れている。25年の校舎改修の際には学校図書館を1階の玄関近くに設置。さらに隣接したワーキングルームにはAVブースやPC、情報端末などを用意し、活字のみでは読書が難しい児童生徒にも対応している。

児島陽子司書教諭は「読書の多様性」について「文字を読み内容を楽しむだけでなく、言葉のリズムや、絵の輪郭を見て楽しむ、音の出る絵本を見て楽しむ、読み聞かせをしてもらい、読み手とのやりとりを楽しむ、といった様々な楽しみ方がある」と指摘する。

児童生徒一人ひとりの「読書カルテ」を作成し、読書に関する興味・関心、活字の読みや読解について細かく把握することで、それぞれのニーズに応えた図書館サービスの提供を行っている。

また障害特性や発達段階に応じたわかりやすい環境整備、バリアフリー資料(マルチメディアDAISYやLLブックなど)の充実、学校図書館を活用した授業への参画と資料提供、探究学習などに取り組んでいる。

文学・植物学など幅広く優れた出版企画を顕彰

学校図書館向き図書の優良な出版企画に対して出版社を顕彰する「学校図書館出版賞」は、例年3作品だが、今回に限り次の4作品が受賞した。▽岩崎書店「賢治童話ビジュアル事典」(岩崎書店編集部/編、中地文/監修)▽大月書店「根っこのえほん」全5巻(中野明正/編、中野明正ほか/著、小泉光久/文、堀江篤史、鶴田陽子/絵、根研究学会/協力)▽河出書房新社「はじめての浮世絵:世界にほこる日本の伝統文化」全3巻(深光富士男/著)▽帝国書院「わかる!取り組む!:災害と防災」全5巻(帝国書院編集部/編)。

学校図書館大賞、学校図書館出版大賞のいずれも、今回は該当なし。なお日本学校図書館振興会は5月末日で解散した。

<学校図書館出版賞 受賞作品>
賢治童話ビジュアル事典 根っこのえほん はじめての浮世絵:世界にほこる日本の伝統文化 わかる!取り組む!:災害と防災
「賢治童話ビジュアル事典」
多くの教科書にも載る宮沢賢治の作品に出てくる言葉や事象を美しい写真と共に解説(岩崎書店)
「根っこのえほん」全5巻。 各ページに地面の上と下を分ける切れ目があり、植物の地中の根っこの様子がわかる(大月書店) 「はじめての浮世絵:世界にほこる日本の伝統文化」全3巻。大判で、ページをめくるたびに美しさを発見できる。価格も良心的(河出書房新社) 「わかる!取り組む!:災害と防災」全5巻。災害が起こるメカニズム、実際の災害、減災で構成。防災意識に繋げる(帝国書院)

 

【2017年6月19日号】

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