「2016東京学芸大学子ども未来フォーラム ~デジタル教材と学校図書館」が12月3日、東京・小金井市の東京学芸大学で開催された。実行委員会には、東京学芸大学デジ読評価プロジェクト、NPO法人東京学芸大こども未来研究所、小金井市、(一社)小金井市観光まちおこし協会、(株)タウンキッチンが参加。地域や企業と連携した形での開催となった。
藤井健志教授 |
東京学芸大学・藤井健志教授は「デジタル教材と(紙の)本は共に同じ教育コンテンツ」と考える立場から、これら2つに学校図書館がどう積極的に関わるべきか提言した。
読書は@読むこと自体を楽しむ「目的としての読書」、A情報を得る手段とする「手段としての読書」に分けられ、デジタル教材は一般的にAの役割を果たすものであり、今日の学校図書館は@は従来通りの対応を、Aは新たな対応を考える必要がある、という。
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デジタル教材は「閉鎖型」と「開放型」の2つに分けられる。「閉鎖型」はデジタル教科書や百科事典、新聞閲覧システム、学習アプリなど。多くが有料で、誰もが簡単にアクセスできない。安全性が高く、作りこまれた内容のものが多い点がメリット。デメリットは管理者が提供した情報しか得られず、情報を隠すことも可能で、"何が分かりやすいか"も管理者の考え方に左右される点だ。
「開放型」は、インターネットなど誰もが自由にアクセスできるもので、原則として費用がかからない。デメリットは危険性が大きい点で、情報やアプリケーションの信頼性や有効性は必ずしも保証されない。「閉鎖型」と「開放型」は大きく異なるため、一緒に論じることはできない。
学校におけるデジタル化の問題は、これまで学校全体か子供かのどちらかを軸に論じられてきた傾向にあるが、学校図書館はその中間のハブのような存在として重要な役割を果たすのではないか。閉鎖型・開放型の特質を見極め、デジタル教材やネット上の情報の中から「多様」「信頼できる」「上質である」といった条件を満たすものを得るには、高度なスキルが求められる。そこで司書教諭や学校司書がこれまで行ってきた選書やレファレンス技術が必要となる。デジタル教材の選択のために、多様な図書資料を揃えてきた学校図書館の持つ専門性が求められている。
(デジ読評価プロジェクト=sites.google.com/site/dejidoku/)
本フォーラムでは小・中・高等学校の実践事例や出展企業を紹介するセミナーをはじめ、ワークショップも行われた。
電子図書館から貸し出し
中央大学付属中学校・高等学校の平野誠司書教諭は、データベースと電子書籍の活用を紹介した。デジタル資料の選び方は、基本的に「(紙の本の)選書と同じ」という。教育活動で利活用するために重視するのは@レポートや論文の資料・文献の調査に利用可能で信頼できる、A授業利用を前提に50人同時アクセスが可能、B随時データが更新されている、C複数コンテンツによる情報の比較が容易、D安定した情報提供。
これらの条件を満たし、選んだのは、非商用で無料のものとして、同校のOPACシステム、WebcatPlus、レファレンス協同データベースなど。商用・有料のものはジャパンナレッジLib、ブリタニカ・オンライン・ジャパン、朝日けんさくくん、理科年表プレミアムなど。
今年度は新たにクラウド型電子図書館サービス「Librari―E」(ライブラリエ、鞄本電子図書館サービス)を導入した。移動教室や修学旅行向けのガイドブックは、紙の本は毎年新刊が出るため購入していなかったが、電子図書館であれば、3か月といった期間限定で複数冊の貸し出しが受けられる。
音楽の授業でブックトーク |
事例をデータベース化
東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会司書部会は、学校図書館を使った授業実践をデータベース化している(www.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/)。本フォーラムではその一部を展示した。世田谷区立世田谷小学校では音楽の授業で図書資料を活用したブックトークを行った(=写真)。
【2017年1月1日号】
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