新聞社は新しいニュースを短時間で届けるよう努力していますが、すべての地域・販売所(店)に対して、ほぼ同時刻に届けることもその一つです。短時間に届けるためには、かつては大きな駅の近くで印刷し、すぐに列車に乗せて配送していました。今は都心を避けて、高速道路の近くに印刷工場を設けているところが多いようです。
では、本社管轄のすべての販売所へ午前3頃に届けるためには、どんな工夫をしているでしょうか。
例えば、遠足で朝6時に学校に集合する場合で考えてみましょう。学校の近くに住んでいる人なら5時50分に家を出れば間に合いますが、学校から30分も離れている所に住む生徒は5時半より早く家を出る必要があります。
これと同じことで、遠くの地域に配送するところほど記事の締切りを早めて、すぐに印刷できるような元(版)をつくるのです。
刷る時刻によって記事の一部が異なるので、朝刊では12版、13版、14版などと欄外に記して区別しています。数字が大きいほど遅い時刻に印刷した、つまりより新しいニュースが入っています。
新13版、新14版などと新を付けたりしている新聞もあり、朝刊だけで5〜6回も異なる版を作っているところもあります。このように記事を替えるのは社会面と1〜3面などの総合面だけで他のページの記事を新しい記事に替えることはまずありません。
ところで、新聞は朝刊のほかに夕刊も発行していますが、すべての地域に朝・夕刊を配達している訳ではありません。ある全国紙は、朝刊約800万部に対して、夕刊の発行部数は約300万部で、朝刊しか読まない人のほうがはるかに多いわけです。
同じ13版でも夕刊のない地域に配達される紙面には「13▲版」など記して朝・夕刊が配達される地域と区別して、「総合版」と呼んでいます。
夕刊にも大きなニュースが載ることがありますが、夕刊のない地域ではそのような記事を知ることが出来ないのでしょうか。いや、夕刊を読まなくてもわかるような配慮がされていますし、朝・夕刊発行の地域でも朝刊のみを購読している家庭もあるので、翌朝刊にも同じ記事の概要を載せています。
平成28年10月28日の夕刊には、文化勲章と文化功労者の決定者の記事が数名の喜びの声と共に載せられましたが、翌日の同じ地域の朝刊には他の受章者のコメントを載せるなど、夕刊を読んだ人にも読まない人にも配慮しています。
【2016年11月21日号】
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