連載:学校保健〜養護教諭は校内外のコーディネーター

【第5回】練馬区立練馬東中学校(東京都) 鈴木裕子養護教諭

命のつながり考える3年間の授業を計画

鈴木裕子養護教諭

第5回は、練馬区立練馬東中学校(山谷安雄校長)の鈴木裕子養護教諭を訪問した。
赴任当初から中学生の抱える心の問題を解決したいと考えていた鈴木養護教諭は現在、命の学習と絡めた「ライフマネジメント」の授業づくりに取り組んでいる。

段階を経て学び命の尊さを伝える

中学生は家庭や友人関係などで多くの悩みを抱える時期だ。

SNSの利用が浸透したことで、SNS特有のトラブルやいじめも増えている。
「他人に冷たく、平気で傷つけてしまう生徒は、自分を大切にできていないからではないか」と考え、命の尊さを伝える授業の実施を決めた。

同校では、3年生を対象に毎年1回、保健師による講演会を行っていたが、助産師を招いた「命の授業」に転換。これまで扱っていた、思春期の体やエイズなどのテーマに加え、出産現場の体験談を交え、命の奇跡を感じる内容とした。

「3年生は将来のことを考え始める時期。命の授業を通じて自分の心と体を知り、将来設計に役立てて欲しい」

さらに、生徒の心の成長状況を見て、段階的に学ばせることが必要と考え、2年生の実施も決めた。

命の授業
練馬区助産師会の助産師のよる「命の授業」に真剣に聞き入る生徒たち

昨年の授業後のアンケート結果では、多くの2年生が「よく理解できた」と回答しており、校内での理解もあるため、「今後は1年生にも導入し、系統立てた授業を計画したい」と語る。

性教育も含めてライフマネジメントに組み込むことで、幅広い学びが期待できる。

不登校減に向けて専門家と情報交換

9月は、不登校や登校しぶりの生徒が増えやすい。自身が特別支援コーディネーターを務めていることもあり、今年度、練馬区のふれあい相談員や校内カウンセラーを交えた校内特別支援委員会の実施回数を増やすことにした。

「心の問題を抱えている生徒は、生活スタイルに表れることが多い。生徒の様子を周囲の大人が察知する必要がある」

不登校は、夏休みの宿題の未提出など、些細なことがきっかけになることもある。小さな変化を見逃さずに対処するために、校内カウンセラーや相談員との情報交換、サポート体制の構築を目指したいという。

保健室に来室する生徒は、1対1の相談を希望する場合が多いため、相談ポストを設置することも検討中だ。
「現在設置しているポストは3年生のフロアにあり、他学年が入りづらい状況。気軽に相談できる環境づくりに取り組みたい」と意欲を見せる。

 

【2016年10月17日号】

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