<PTA特集インタビュー/全国高等学校PTA連合会・佐野元彦会長>

キャリア教育の支援通じ子供に自己有用感を育む

保護者と教員は同士〜協働し子供の成長支援を

全国高等学校PTA連合会 佐野元彦会長
一般財団法人
全国高等学校PTA連合会
佐野元彦会長

高校の役割は生徒を自立した大人として社会に送り出すこと。「キャリア教育」で、地域の問題解決に高校生が積極的に取り組むことの意義を佐野元彦会長は述べた。自己有用感を体感させ、それを自己肯定感へ育てることが大切だと語る。

■評価を保護者と教員がさらなる成長につなげる

現在、学習指導要領改訂に関する中央教育審議会の教育課程・高校部会に参加していますが、そこでの議論を通して、「評価」について考えました。評価をしたらお終いではなく、子供の長所をどう伸ばすか、弱点をどう克服し次につなげるかなど、多面的な理解が求められます。教員は評価を次の成長にどうつなげるかが、これからは最大の仕事になると思います。

しかし、教員は時間がない、という声が多い。

子供に自己実現を図って幸せな人生をおくって欲しいという思いは、保護者も教員も同じだということ。同じ目標に向かって取り組んでいく同志であることを保護者から発信しよう、保護者と教員が一緒に取り組むことで教育活動の広がりができるはずだと、PTAの研修などでメッセ―ジを発しています。

■何のために学ぶのか保護者の出番は多い

高校は、生徒を自立した大人として仕上げて社会に送り出すところです。どんな人間になって周囲の人の役に立つことができるのか、さらに社会の中で役立てるのか。このように視野を拡げていくのがキャリア教育で、ベースにはどんな大人になりたいのかということがあり、保護者ができることは多い。保護者はどんな大人になるのかという子供の意識を育んでいく役割があります。そして自立した人間を育てる「自立支援者」として、教員と共に手を取って進みたいと思います。

新学習指導要領の方向性が出され、何を学ぶか、どのように学ぶかが、求められています。

キャリア教育の意義を考えると、そのベースは、何のために学ぶのか、という点ではないでしょうか。

■地域の問題に取り組み将来の応援団をつくる

各県連合会に、「今何が問題か」と尋ねると、「地域の存続」という回答が多くみられます。この危機と教育がどう関わるのかについて、高校は取り組んでいかないといけない。

高校とPTAが地域の問題解決に一緒に取り組んでいる事例は数多くあります。地域のイベントに高校生が参加する、その橋渡しを、PTAが行い、そうした活動が地域の役に立っているという自己有用感につながっています。この有用感が自己肯定感に変化していきます。

私が一番問題だと思っているのは、日本の高校生の自己肯定感の低さです。自己肯定感を得るためには、自己有用感が必要であり、自分は何のために学ぶのかという問題にも繋がってきます。

秋田県では、雪下ろしや独居老人の訪問、東日本大震災で避難してきた小中学生への学習指導などのボランティアを通じて、自分が役に立っていると実感を得ている事例があります。こんな事例が全国にあります。全商店街の活性化などの取組も数多くされていて、総合学科や商業高校などの高校生が企画した商品の販売やイベントの企画を行う。こうした活動をPTAがサポートする。生徒のサポートを通じて、実は保護者も新たな気付きがあるのです。

■PTA活動にこそコミュニティの参加を

最近、PTAにコミュニティを加えてPTCAという言い方をします。地域コミュニティとの関係を大切にしなくてはいけません。高校は小中学校に比べて生徒が広い地域から通学するので、地元意識は持ちにくいかもしれません。しかし子供は、成長に従ってかかわる社会は広がっていくもので、高校はより広い地域と関係を築くべきです。卒業後に地域に残る子供ばかりではありませんが、卒業後もかかわった地域を応援しようと思う気持ちは芽生えるでしょう。

ネットリテラシーや薬物乱用防止など、従来から取り組んできた課題にも引き続き取り組みます。

情報化社会の中では、人としての判断が求められ、そのためにはリアルの経験が大切。ネットでは自分が主役になれ、目立つことができ、賞賛を受けられます。しかしそれは仮想空間であるネット上のことで、実際の自分が評価されたわけではありません。バーチャルは楽しいけど、リアルも面白いと教えることが必要でしょう。

薬物乱用防止パンフレットの改訂作業の中で、興味深い話をうかがいました。喫煙の経験のない人は、危険ドラッグを吸引する時に咳き込むなどの不快感を持つそうです。しかし、喫煙経験者は簡単に吸い込むことができてしまう。この観点も加えて、喫煙防止も訴えていきます。

 

【2016年8月15日号】

 

>>求められる学校との"協働" 期待に応えられる活動へ<日本PTA全国協議会・寺本充会長>

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