全国健康づくり推進学校の表彰式 全国で105校を表彰<日本学校保健会>

学校・家庭・地域での取組を評価

全国健康づくり推進校 表彰式
最優秀校に決まった5校を表彰

(公財)日本学校保健会は、2月18日に日本医師会館で「全国健康づくり推進学校」の表彰式・実践事例発表会と事業報告会を開催。表彰を前に同会の横倉義武会長は、「表彰校はいずれの学校も家庭や地域と一体となった素晴らしい健康づくりに取り組んでいる。モデル校として引き続き取り組んでほしい」と激励した。また、同会の今年度の重点事業である「児童生徒等の健康診断マニュアル」の改訂などについて報告が行われた。

「全国健康づくり推進学校表彰事業」は、学校と家庭、地域社会と連携を図り積極的に健康づくりを推進し、成果を挙げている学校を表彰することでその充実・普及を図るもの。平成14年度から始められた事業で、今年度より名称が改められた。

平成27年度の最優秀校には、福岡県新宮町立立花小学校、愛知県豊橋市立下地小学校、岐阜県岐阜市立長良中学校、大阪府立藤井寺高等学校、山梨大学教育人間科学部附属特別支援学校の5校が選出された他、優秀校11校(内、2校に特別協賛社賞)、優良校89校が選ばれた。

表彰式では、受賞校を代表して岐阜市立長良中学校の原尚校長があいさつ。原校長は関係者全てに対する謝辞を述べた上で、「この受賞を機に、子供たちの将来に関わる健康づくりにますます尽くして参りたい」とさらなる健康教育の充実と発展を誓った。

また、同会弓倉整専務理事からは平成27年度の同会の事業内容が報告された。事業は学校保健の振興・普及・啓発を図ることを基本方針としている。

振興に関する事業では、保健学習授業推進や「児童生徒等の健康診断マニュアル」の改訂、卓球女子の伊藤美誠選手による「未成年者飲酒防止ポスター」の配布を実施。普及に関する事業では、会報「学校保健」の隔月発行、検便検査等の学校保健用品等の推薦・斡旋、学校保健関係図書の頒布、ウェブサイトの広報。啓発に関する事業では、学校保健に関連した研修会・講演会を開催し、学校保健が当面する課題解決に向けて事業が進められた。

健康診断マニュアルを改訂<学校保健会>

健康保険会 事業報告
今後の健康診断は成長曲線、肥満度曲線がカギ

今後の指針として活用を

2月18日に都内で行われた(公財)日本学校保健会の事業報告会では、学校保健の振興・普及・啓発の3つのポイントから平成27年度の事業が報告された。特に、振興に関する事業として行われた『児童生徒等の健康診断マニュアル』の改訂は、今後の健康診断の指針となるものであり、本年度を代表する事業だ。

断る"スキル"の指導を

薬物乱用防止教育

文部科学省の監修のもと、平成18年度以来の改訂を進め完成したマニュアルは、全国都道府県・市区町村教育委員会、国公私立の小・中・高・中等教育・特別支援学校に各1冊送付された。

同マニュアルは児童生徒の発育の評価に際して、身長・体重曲線等を積極的に活用するために作成。児童生徒の健康診断マニュアル改訂委員会・成長曲線小委員会の村田光範委員長は、マニュアルの活用について健康診断での身長と体重の測定結果は必ず「身長・体重成長曲線」と「肥満度曲線」を作成して、評価されなければならないとする。身長が高ければ適正体重は大きく、低ければ小さくなるため、体重は測定値そのものでは評価ができないからだ。体重は適正体重に基づき、肥満度に換算し評価されることが望ましい。

子供の成長異常は、児童生徒を毎日見ている教員からは気づきにくいが、成長曲線を作成していけば、基準図との差から、異常を早く発見することができ、病気の早期治療が可能になる。

このような評価ができるようになったのは、平成12年度の乳幼児身体発育調査と学校保健統計調査により、日本人小児の体格基準値が確定したためだ。「この値からできた基準図は、今後変更されることはない」と、村田氏は述べた。

シンポジウムでは、「これからの学校における薬物乱用防止教育の在り方」をテーマに、意見交換が交わされた。岐阜薬科大学元学長の勝野眞吾氏がオーガナイザーを務め、東京薬科大学教授(元・文科省健康教育調査官)・北垣邦彦氏、兵庫教育大学大学院教授・西岡伸紀氏、国立精神・神経医療研究センター室長・舩田正彦氏、日本学校保健会事務局長・並木茂夫氏がシンポジスト。

並木氏は、校長を務めた経験を基に、生徒は薬物だけに特化して問題を起こすわけではなく、薬物以外にも飲酒、喫煙など、他の問題行動もあり、薬物防止の指導だけでは足りないことを示唆。「生徒は薬物を断ればよいと思っているが、ロールプレイングをさせると断るコミュニケーション能力が備わっていないことがわかる。"断る勇気"だけでなく"断る技術"を指導しなければならない」と述べた。

西岡氏は、単なる薬物の知識だけでなく、自尊感情や対人関係を築く能力、意志決定能力を育てる指導など、いわゆる「ライフスキル教育」の必要性を挙げた。

■健康づくり推進学校/最優秀校の事例

主体は児童・生徒

新宮町立立花小学校

立腰教育を通じ
頭・心・体を健康に

コミュニティ・スクールとして、学校・家庭・地域が連携・協働し、「健康教育、立腰教育」を三者の共通目標とした教育活動を展開している。

腰骨をしっかり立てる「立腰教育」を通じ、正しい姿勢、はっきり返事・反応、廊下まで聞こえる声の「3つの学び方」と、気持ちのよいあいさつ、時間いっぱいもくもく掃除、歩いて登下校・遅刻ゼロの「3つの行い方」を実践。欠席がゼロの日は、平成26年度が34日27年度は2月18日で33日に達した。

健康教育は、保健主事と養護教諭が軸となり、頭・心・体の健康が高まるように学校保健年間計画を立案・推進。「頭の健康」は、学力の向上を目指しており、具体的な取組は、廊下まで聞こえる声で論語の素読、立腰の姿勢による朝の読書タイムなどだ。全国学力・学習状況調査は国語Bと算数Bの全国平均は10%程度高いという。

豊橋市立下地小学校

校区の川を泳ぎ
自己肯定感を育む

「健やかな心と体づくりをめざし、主体的に行動する下地っ子の育成」を研究主題とした健康教育を推進している。

今年度で33回目を迎えた行事「豊川横断水泳大会」を中核にした健康教育が目玉だ。校区内を流れる川幅150mの豊川を泳ぎ切るもので、平泳ぎで5年生は200m、6年生は300mが目標。

水中監視の大人が見守る中、2人1組で泳ぐ。泳いだ後の児童の作文では「泳ぎ切ることで心も強くする行事」と綴られるなど、気力・体力・生きる力が育まれる。

その他、週に2回朝の時間にスポーツタイムを設け、昼休みには外遊びを励行。平成24年度からは年に4回、生活を見直す健康チェックを行い、自分の生活を見直し自己肯定感を育んでいる。

岐阜市立長良中学校

健康教育を実生活に
自分を守れる人間に

「自分の命を自分で守る」ことが健康教育のテーマだが、それは防災教育ではなく、全ての健康教育の行きつくところと考える。健康教育を生徒の実生活に落とし込むことで、生徒主体の活動に仕上げるため、生徒の委員会を「生徒会健康開発部」「生徒会給食部」と呼び活動している。教職員も共通理解・共通行動を図るため、健康教育指導委員会を設置し中心となって活動を推進。

歯科保健活動などを中心に活動する健康開発部は、部長が作成した「ヘルスフルプラン」という健康日記の活用や、給食後の歯みがきを励行。歯みがき時には環境部と連携して濡れた手洗い場の水滴を拭く活動も毎日実施。給食部は、食材や調理員への感謝を表す「残菜0活動」を行い、残菜の原因を給食当番に聞いたり、食べきるアドバイスを実施。1日平均5・6kgだった残菜を、26年度には1・5kgまでに減らした。

大阪府立藤井寺高校

96人の保健委員が
健康づくりの要に

健康に対して生徒自身のエンパワーメントを高めることが健康づくりの目標。その活動の中心は、総勢96名の保健委員。各クラス4名の計算で、生徒の10人に1人程度が所属していることになる。

平成19年から四天王寺大学と行っている高大連携のピア活動は、健康教育活動の要だ。当初は、「性感染症」をテーマにし、7年目から「食育」をテーマに掲げてきた。

中学生が体験入学で来校した日には、大学生が弁当の栄養バランスについて指導し、保健委員が中学生と一緒にフェルト食材を使って弁当の詰め合わせを行った。
地元の栄養士会による講義を受け、保健委員とコンピューター部が弁当の作り方についてDVDを作成するなど、様々な取組をピア活動につなげ、またそれら取組を報告する機会を設け、意識を高めた。

山梨大学教育人間科学部附属特別支援学校

実際の状況を想定し
発展的に反復学習

「基本的な生活習慣や運動習慣を身に付け、自主的に健康管理し、目標に向かって粘り強くやり遂げようとする強い心と体」を持った児童生徒の育成に努めている。

各教科等を合わせた指導の中に、「日常生活の指導」の時間を設け、衛生習慣の形成に向けて、実際の状況下で発展的に繰り返す指導を実施。小学部は定期健康診断の事前指導に「お医者さんとなかよし」の時間を設け、健診への見通しを持ち、スムーズな受診、医者への恐怖や病院受診への不安軽減、病気の予防や健康増進へつなげている。

また、運動に親しむ態度や習慣を身に付け、自主的な健康管理ができる力を養い、心身の解放と情緒の安定を図るため、各学年部で目標を持ち各教科等を合わせた「朝の体育」の指導を行うことで、「気持ち良い朝のスタート」に結びつけている。

 

【2016年3月21日号】

 

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