タペストリーでガーナのカカオの森を体感 |
株)明治は昨年、「カカオ」に関する食育の出前授業を企画し開始した。これまで旧明治乳業としての「ミルク」に関する出前授業は実績が豊富であったが、平成23年に明治グループの再編により旧明治乳業と旧明治製菓が統合され「(株)明治」となったことがきっかけとなり、チョコレートの原料である「カカオ」に焦点を当てた出前授業が3種類新たに加わった。1月18日には東京都小平市立小平第六小学校の6年生に、国際理解や国際協力をテーマとした「希望のチョコレート」の授業が行われた。
6年生は3学期に社会科で国際理解の授業があるため、その事前学習の意味も含め、「カカオ」の栽培から世界を学ぶ食育授業が行われた。同校の白井ひで子栄養教諭は授業の冒頭に「1学期に明治の方にお世話になり、朝ごはんの大切さを学びバター作りなどをしました。今回はチョコレート(カカオ)のお話をしてもらいます」と伝えると、ランチルームに集まった6年生は、興味津々の表情を明治の谷田加代子さん(業務部コミュニケーション課食育担当/管理栄養士)に向けた。
1枚の絵から学ぶ
日本とガーナの関係
谷田さんはタペストリーにした「1枚の絵」を児童に見せ、「これを見てどんなことを思うかな」と投げかけ、ワークシートを配布。ワークシートにはガーナの子供たちが描いたカラフルなカカオの実と木が描かれ、何の実か、何の木か、どこの国の人が描いた絵なのかの3問が記載されている。
谷田さんは「これはガーナのアセラワディ村の小中学生が描いた絵です。この絵は、国を越えてガーナと日本が協力し合っている証拠です」と授業の導入として提示した。
普段の食育指導と
リンクした学び
その後、チョコレートの原料であるカカオがどのようなものなのか、「カカオポッド」と呼ばれる実の模型を児童に見せ、さらに大きな写真を広げてカカオの森を再現。カカオは木の種類によって実の色が茶や紫など異なり、幹にも実をつける。花も白、赤、ピンクなど様々で花が100咲いても実るのは1つ程度と不思議で貴重な植物だ。
約2、3年で実になると、中を取りだし発酵・乾燥させ約2か月かけて船便で日本に運ばれ、加工される。その工程はクイズで説明。「発酵」の説明時には「みそやしょう油、納豆などと同じことが行われますよ」と話すと、児童から「発酵!!」と元気な声があがった。この出前授業には、普段の食育指導とリンクする内容が盛り込まれている。
ガーナの課題を
みんなで考える
ガーナの子供たちが初めて色を使って描いた絵 |
授業を振り返りチョコを試食しながらパッケージでも情報を確認 |
授業の最後は、ガーナの人々が抱える問題「雨水に頼っている」「病院が不足している」「水道の整備が十分ではない」「学校に通える子供たちが少ない」の4つについて紹介。
「ガーナのカカオはおいしいと評判が良いですが、これ以上作られなくなってしまったらどうなるでしょうか」と児童に問いかける。谷田さんはカカオ産地を支えるために日本や同社が行う国際協力の現状を説明した。映しだされた写真では、井戸を作る手伝いをする同社の社員とガーナの人々、カカオ農家への勉強会、ODAの活動で作られた学校に同社が黒板やいす、机、文房具など必要なものを送っている様子などが紹介された。
そして最初の絵をもう一度見せ、「この絵は、ガーナの子供たちがやっと通えるようになった学校で、"初めて"色を使って描いたもの。国際協力とは、いろんな国の人が平和で安定した生活をするためにいろんな活動をしていることです。みんなでもできることがあると思いますので、遠い国のことだと思うのではなく視野を広げてください」と締めくくった。
苦い・甘いを体感
ガーナの思いを試食
その後は、同社の商品「チョコレート効果」「ミルクチョコレート」を試食。少し苦味の強い「チョコレート効果」を食べ味の違いを感じると共に、普段は何気なく食べているチョコレートを大切に食べる姿が見られた。児童からは「ガーナの人にとって大切なカカオから作られたチョコレートを感謝して食べたい」「チョコレート一つ一つに農家さんの大変さが入っていて、今日はいつもと違う味に感じた」「ガーナの人とつながっていてお互い助け合っていることがわかった」「本には載っていないことを学ぶことができた」などの声が寄せられた。
【教員の感想】▽6年担任・大藏久美教諭「明治さんは牛乳の授業もしてもらったが、直接企業の方にお話を聞くことは、キャリア教育にもつながる。中学の学びにもつながるといいなと思っている」▽6年担任・佐藤宗一郎教諭「子供たちは以前からこの授業を楽しみにしていた。チョコを通して人と人がつながっているということを学んでくれた。今日は社会科との関連だったが、他教科への可能性も感じた」▽白井ひで子栄養教諭「チョコレートを食べる時間があったが、何か"食べる"というのは子供たちの心に強く残る。知識は使わないことがあっても食べることは一生続く。"食べる"ことは国際理解にもつながり、豊かな人生に結びつくのではないかと思う」
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カカオポッドの模型など、イメージが出来る資料が豊富 |
食育担当者が講師となり、カカオ・チョコレートという身近な食材を通じて、3つのプログラムで出前授業を実施。A「発見!チョコレートのひみつ」(自然の恵みへの感謝)=対象学年/小4〜6、所要時間/約45分、関連教科/総合・学活、B「チョコでなるほど!歴史タイムトラベル」(日本の食文化や食のルーツ)=対象学年/小4〜6、所要時間/約45分、関連教科/国語・社会・総合、C「希望のチョコレート」(国際協力)=対象学年/小6〜中、所要時間/約45分、関連教科/社会・総合・道徳(費用は無料、平日の実施)
詳細=http://www.meiji.co.jp/meiji‐shokuiku/
【2016年2月15日号】
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