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前編は、精神疾患による休職教員の割合が、学校種別で一番高いのは、特別支援学校であるという事実と、あまり知られていない特別支援教育現場の現状・課題を大まかに捉えました。今回は、その現状と課題を解決するための糸口を探っていきます。
ハード面の環境整備
健康と安全の確保を
特別支援学校の児童・生徒数の増加に対して、施設設備が追いついていない状況があり、この状況下では、児童・生徒も教員もストレスフルに陥りがちです。生徒と教員共に、健康と安全確保ための学校環境整備が必須です。
そのためには、まず特別支援学校における適正な学校環境とは、どのような状況で、どのような基準を満たすべきか、全国的に調査して検討する必要があると思います。様々な配慮が必要な子供たちだからこそ、学校の多様な設置基準が必要です。それを全国のスタンダードとして定着させていく必要があるのです。
「多くの教員がストレスを感じている」。特別支援学校の「職務の質」を前回のおさらいとしてまとめてみましょう。
▽障害種別による教育の大きな違いへの対応をせまられる▽個に応じた多様な教育を臨機応変に、チームで、安全を第1に取り組む必要に日々追われている▽人事、組織ともに管理職の意向による変化が激しい、この3点を挙げました。
「中間管理職」を支える
システムの構築が急務
一般的に学校組織は、メンタルヘルスケアにおけるラインケアをしにくい職場であると言われますが、その中でも特別支援学校は、比較的管理職、中間管理職、一般職員とラインがはっきりとしているので、この方法は有効です。しかし、現状では中間管理職に業務の偏りが見られ、中核となるべき「総括」の教員は疲弊し、40代の休職者は突出しています。つまり、中間管理職を支えるシステム作りが欠かせないことを意味します。仕事の分散を図り、これから多くなる若い中間管理職を支える、50代の教員の役割が重要です。
そして何よりも、管理職のメンタルヘルスへの理解と、中間管理職への仕事の与え方の配慮、メンタルヘルス管理者としての自覚が必要です。
特別支援学校への投資は
未来への投資につながる
何かを変えるには「お金」「時間」「人」の問題が必須ですが、特別支援学校のためだけにこれらを割くことは不可能です。しかし、教育への投資は早いほど、安価で高い効果を上げることができます。
特別支援学校は「未来の学校」です。子供と教員の多様性を認め、様々な教育課題の先駆的な理論の構築と実践の場であり、教育の最先端はここで生まれるといっても過言ではありません。いわゆる普通級の1クラス10%を占めるとも言われる発達凸凹の子供たちを、日本がどのように育てるかは日本の未来に直結します。発達凸凹の子供たちへの適切な教育は地域のセンター的機能を持つ特別支援学校から広がっていくのです。
そして現在その在り方を模索しているインクルーシブ教育においても、特別支援学校と特別支援学級等に関わる役員が中核的な役割を担うことにもなっていくでしょう。幼児期からの早期発見、早期療育を義務教育につなげ、行政の壁を越え、切れ目のない支援を行うことが重要です。多様な発達を保障できれば、二次障害を抱える子供の減少、特別支援学校児童・生徒数の減少にもつながります。この子供たちを日本や世界で社会を支える人材に育てることが、子供、日本の幸せです。それを担うのは保育士や教員です。「人を育てる人」を守り育てること。これこそが日本の未来に最も有効な投資だと思います。
【2015年11月16日号】
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