平成25年度に「いじめ防止対策推進法」が成立し、3年目を迎えている。文部科学省では昨年から「いじめ防止対策協議会」を発足させており、9月4日には平成27年度の第1回会議が行われた。同会議では、今年7月5日に岩手県矢巾町で中学2年生男子生徒がいじめを理由に自殺したとみられる事案を受け、いじめ防止対策推進法に基づく対応について、また、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の一部見直し等について報告がなされた。
真に実効性のある対策を
会議の冒頭で小松親次郎初等中等教育局長は、「いじめ防止対策推進法の成立から3年目、いじめ対策の機能が実質的になるためにはどうしたら良いのか、いじめは決して許されないが、どの学校、どのお子さんにも起こり得ること。真に実効性のある対策にしていくべく忌憚のないご意見をいただきたい」とあいさつ。
座長の森田洋司氏(大阪市立大学名誉教授、鳴門教育大学特任教授、大阪樟蔭女子大学前学長)は、「制度や組織があっても、そこに魂がなければ何の意味もない。基本を改めて見直さなければならない」と述べた。
7月5日の矢巾町の事案後、8月4日には文科省から「いじめ防止対策推進法に基づく組織的な対応及び児童生徒の自殺予防」について初等中等教育局児童生徒課長通知が出され、法に基づく組織的な対応に係る点検のあり方や、児童生徒の自殺予防の対応等再認識がなされているところだ。
東京都ではこの文科省通知を受け、8月10日に都立学校長へ向けて通知を出し、「いじめ防止対策徹底のためのチェックリスト」を校長が全教職員を対象に、個別の取組状況を調査するように課している。
加害者・被害者双方への対応を
9月4日の「いじめ防止対策協議会」には、自身の一人娘をいじめによる自殺で亡くしたNPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の小森美登里氏が参加し「大人の無知が子供を死へと追いやっている」と述べた。
同法人が子供に行った調査(平成24年10月〜25年5月8448件回収)によると、いじめられた経験のある子供のうち約3人に1人が「つらくて死んでしまいたい」と思ったことがあると回答し、その気持ちは本人のいじめ被害の認識がはっきりしているほど強いことがわかったと報告。
一方で、いじめをした側へのアンケートでは、「いじめをしていた頃、自分も悩んだりつらかったことなどがあった」との回答が小中高生共に約7割だった。
さらに、教員へのアンケート(296件回収)によると、いじめの報告は37%が「本人から」と回答しており、教員に頼る児童生徒が多い。だが、それを「解決できる自信がある」と答えた教員は小学校で4割、中学校で3割に満たない。
文科省は、今年10月6日の関東ブロックを皮切りに、全国で計4か所の「平成27年度いじめの防止等に関する普及啓発協議会」を開催し、いじめの防止等に関する理解を深め、一層の取組強化を促進していく。
国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターでは、7月にリーフレット「いじめに備える基礎知識」を作成している。
これまでに同センターが刊行したいじめに関する資料を踏まえて必要なポイントを示した資料と、校内研修会等で活用できる研修ツールのリニューアル版の2点から構成されたものだ。
H28年度概算要求 SC・SSW拡充
先ごろ発表された平成28年度の文部科学省の概算要求では、「いじめ・不登校対策の推進」として、12億円増の62億円を要求。内訳はスクールカウンセラー(SC)の配置拡充48億円(8億円増)、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置拡充10億円(4億円増)などだ。
SCの配置拡充については、新規項目として教育支援センター(適応指導教室)の機能強化等、不登校支援のための配置が1147か所となった。
【2015年9月21日号】
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