全国養護教諭連絡協議会 木嶋 晴代会長 |
教育現場で子供の健康課題に向き合う養護教諭の52研究会が集まり、会員一人ひとりの資質向上を目指す全国養護教諭連絡協議会(以下、全養連)では、6月に開かれた総会で新会長に木嶋晴代氏が選任された(千葉県市原市立双葉中学校養護教諭)。木嶋新会長に今年度の主な取組や、今日的課題に臨む養護教諭のあり方などを聞いた。
研修・研究の充実と法的諸問題の改善を
食物アレルギーなどをはじめとするアレルギー疾患や生活習慣の乱れ、いじめや不登校などのメンタルヘルスなど、子供たちの健康課題は山積しています。そうした状況や昨年度までの活動を踏まえ、全養連は次の5項目を重点に捉えた取組を進めて参ります。
まず「研修活動の充実を図る」ことで、7月30日から3日間に渡って夏の研修会を開催し、養護教諭の専門的な力量の向上を図ります。6月の学校保健連絡協議会では、職務や健康課題の解決に向けた研修を実施しました。養護教諭の活動に役立つよう、実践的な研修を実施していきます。
次に、「調査研究活動の充実・発展」です。一昨年までは全国調査を毎年実施していましたが、今後は隔年で調査結果を発表し、平成26年度の調査結果についても今年9月に調査報告書を発行します。昨年度からWeb入力に切り替えたことで確かな結果、確かな課題が読み取れ、有効な活用が期待されます。
3つ目に継続的なものですが、「養護教諭に関わる法的諸問題の改善に関わる取組」です。養護教諭の資質向上のため、様々な法整備に向けて要請・要望活動を行います。子供の健康課題に取り組む上でも、管理職や主幹教諭への登用など養護教諭の立場を向上させることは重要と考えます。
広報活動を充実し組織の盤石化を図る
4つ目は「組織の盤石化を図ること」。関係機関と連携強化を図りながら、加入している養護教諭にとってプラスとなり、また他団体から信頼される組織を目指します。
最後は「広報活動の充実」です。会報やホームページを通じて協会の活動を発信し、さらに隔年発行の研究誌「瑞星」を通じて全国の養護教諭の実践活動を広く伝えていきます。
基礎知識を定着し校内研修の核に
複雑化する子供の健康課題に対応することは私たちの重要な職務です。アレルギー疾患は児童生徒の命に関わる場合もあり、緊急時の的確な対応が求められます。文部科学省から「学校給食における食物アレルギー対応指針」が出され、研修に使える映像資料もあります。とても実践的で充実した内容ですので、養護教諭が中心となって校内研修を定期的に行ってほしいと思います。
平成28年度から、健康診断の内容が変更されますが、各学校に応じた健康診断のあり方が求められます。色覚検査が健康診断の必須項目から削除されて約10年経ち、色覚検査自体を知らない世代もいます。削除はされましたが、必要に応じて希望者へ検査を行うことができますので、基礎知識の定着が必要です。
発信力を強化し好事例の共有を
これからの養護教諭は研究や発表の手法を学び、プレゼンテーション力を養うことが必要です。現場での経験を通じて多くの貴重な実践を持ち合わせながら、それを発信する力が弱く、自分だけの知識で終わってしまいます。全国の仲間と知識を共有することで児童生徒への対応も、より優れたものとなります。
また、養護教諭は子供の体の異常やこころの問題、児童虐待等にいち早く気付く立場にあります。子供が発するサインを見逃さず、管理職、担任、保護者、関係機関などチームで対応し解決に導いていきましょう。
養護教諭は多くの健康課題に直面しますが、一人の養護教諭として解決にあたるのではなく、学校経営の課題解決にも貢献できるような「課題解決型」の保健室経営計画を作成してほしいと思います。
周囲と連携を図りながら、児童生徒の健康課題解決に向けて頑張っていきましょう。
【2015年7月20日号】
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