体験活動の充実を図る 産学連携で学びを拡げる

今後注力したい分野
小学校 歴史・文化体験
中学校 産業・職場体験

  「体験学習」は遠足、移動教室、校外学習、社会科見学、修学旅行など幅広い行事で行われ、学校の特性や教育目標によって体験する分野は様々だ。授業でのICT活用が進む中、平成27年度の文部科学省の予算にはICTを活用し遠隔地間における児童生徒の学びの充実や、社会教育施設等と連携した遠隔講座の実施などについての実証研究が予定されている。社会教育施設等の連携として、美術館、博物館、科学館の学芸員による遠隔講座は、体験学習の事前学習として活用することができる。それらを踏まえ、本紙は全国の小中学校500校へ体験学習に関するアンケート調査を実施し、その連携への期待を探った。

小学校での出前授業企業・行政と多種

 社会教育施設(体験学習施設、海外含む)との連携について、小中学校に差が見られ、小学校では42・3%が「学芸員などによる出前授業を行っている」と回答する一方で、中学校は「特に行っていない」が67・7%と最も高い割合を占めた。

 小学校での連携例は、行政に関連した施設の学芸員や担当者の出前授業が多いようだ。地域の特性を生かしているケースが見られ、宮城県蔵王町立永野小学校では、生涯学習課を通して講師を招き、田植え、田んぼや小川の生き物、昔の道具などについての出前授業「水辺の楽習」を実施。愛知県の椙山女学園大学附属小学校は、地元企業トヨタの原体験プログラムを受けるなど、小学校における出前授業のジャンルや実施回数は多い。

 中学校で「学芸員などによる出前授業を行っている」と回答した学校では、近隣の美術館、博物館、地域の施設等へ生徒が出向くことが多く、特に美術館では実物を見ながらのレクチャーを受けているケースがある。

社会教育施設と連携ICT活用も視野に

 遠隔地の社会教育施設や体験学習施設とのICTを活用した連携については、小学校で実施済みと回答した学校が数校ある。中学校では機器の配備が済んでいるものの実施している学校はなく、「興味はあるがまだ取り組んでいない」が29・0%、「企業のサポートがあれば取り組みたい」が22・5%と、配備済みの機器を活用した連携を望む学校もある。

現状の体験学習と連携希望分野に差

 社会教育施設や体験学習施設と連携した授業で今後注力していきたい分野について、小学校は「歴史・文化体験」の割合が21・8%と最も高く、中学校は「産業・職場体験」が20・0%で割合が高い。次いで連携を希望する分野は、小学校が「震災・防災体験」「産業・職場体験」、中学校が「歴史・文化体験」「震災・防災体験」と続く。

 現状、体験学習の訪問先で重視している項目は、小学校で「自然体験」、中学校で「歴史・文化体験」がトップだが、連携したいと思う分野とはやや異なっている。これは修学旅行と関連がありそうだ。

 全国修学旅行研究協会が実施(全修協)した中学校の修学旅行に関する調査(平成25年度)によると、関東地区の場合は京都・奈良方面の修学旅行が多く、8割の中学が体験活動を実施する中でその内容は「創作(24・2%)」と「歴史伝統文化(22・5%)」が、他を大きく引き離している。

 日本修学旅行協会(日修協)が実施した調査(平成25年度)でも、体験学習は「歴史学習」の実施が46・0%だ。
京都では能や狂言の体験、京ことば研修、友禅染体験、舞妓との交流など古都ならではの様々な体験が行われており、「歴史・文化体験」の実施率の高さにつながっているようだ。

事前事後学習の指導不足に課題

 事前事後学習については、小中学校共に「教科・指導要領との関連」を重視し、本紙調査では小学校で24・6%、中学校で19・3%となった。全修協の調査では事前・事後指導の不足や生徒の主体的取組が課題となっており、特に主体的取組は73・4%が課題としている。児童生徒の主体的な活動の重要性について認識しているものの、その具体的な授業方法は検討・模索中であるようだ。

【2015年4月20日号】

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