歴史・文化を学ぶ島根県の教育旅行 尾道松江線全線開通で広がる学び
3月22日、島根県と広島県を結ぶ中国横断自動車道「尾道松江線」が全線開通し、松江(島根県)と尾道(広島県)間の137キロメートルが80分短縮され約2時間半となる。島根県ではこれまで出雲大社や松江市内、石見銀山が教育旅行の主な学びの地であったが、全線開通によりこれまでなかなか足を伸ばすことができなかった「たたら製鉄」の里である奥出雲町や雲南市での産業学習も視野に入れることができ、学びの幅が広がる。
尾道松江線の開通は山陰・山陽の移動時間を、格段に短縮した。島根県・松江から広島県・福山駅までは約3時間となり、首都圏からは新幹線と航空機で往路と復路の移動を変えるのも一つの方法だ。
その3時間の途中にある奥出雲町や雲南市は福山駅から約2時間、松江市内からは約1時間、「高野」「雲南吉田」のICが「たたら製鉄」の学びの玄関口となる。
雲南市で学ぶたたら製鉄の歴史
「鉄の歴史博物館」で基礎的な学 びを得る(上)、脈々と受け継がれ る「日刀保たたら」(下) |
「たたら製鉄」は粘土で築いた「炉」を使って、木炭と砂鉄を原料にして「ふいご」で風を送る和鋼の技術。江戸時代から明治初頭にかけて島根県だけでも日本の鉄の半分近くを生産し、古代から近代までの日本産業を支えてきた。
雲南市の「鉄の歴史博物館」「鉄の未来科学館」「菅谷たたら山内(さんない)」「たたら鍛冶工房」は、「鉄の歴史村」として、それぞれの施設が近隣にあるため、一度に大勢が学ぶことができるだろう。
「鉄の歴史博物館」は製鉄の歴史や技術、たたらの工程が映像やパネル、道具を通して理解できる。「鉄の未来科学館」はたたら製鉄の比較や製鉄技術の変遷などを学び、未来へ向け鉄が果たす役割を考えるきっかけを作る。「菅谷たたら山内」は近世たたら製鉄の遺構を歩いて見学し、研究員による説明も実施。
「小だたら操業体験」や「刃物づくり体験」を通して、たたら製鉄の文化を深く理解する機会も設けられる。小学生から体験が可能で、中学生・高校生は産業教育を通じたキャリア教育として教育旅行に盛り込んでも良いだろう。
今も続くたたら技術奥出雲町で体感
奥出雲町の「奥出雲たたらと刀剣館」は、日本で唯一続けられている「日刀保たたら」や「玉鋼」を用いて造られる日本刀の展示解説を行う施設。実物大の炉と保湿・防湿のための複雑な地下構造が見られ、この地下構造の断面模型は必見。
他にもこのエリアには、たたら製鉄に関連した歴史的な施設が多い。さらに、出雲大社近くに平成19年にオープンした島根県立古代出雲歴史博物館(出雲市)にもその歴史をひも解く展示があるので、学習の幅は広い
人的サポートで安心の教育旅行に
また、(公社)島根県観光連盟は昨年、中高生向けの事前学習用ワークシートを作成。「出雲大社と島根県立古代出雲歴史博物館」「世界遺産石見銀山とその文化的景観」「松江城と松江歴史館」の3種がある。県内滞在中は、教育旅行誘致コーディネーターが安全・安心をサポート。
Web=www.kankou‐shimane.com/
問合せ=0852-21-3990(島根県観光連盟)
【2015年3月23日号】
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