継続した活動を評価
日本学校保健会が健康教育推進学校を表彰
(公財)日本学校保健会は、2月19日に健康教育推進学校の表彰式と実践事例発表会、事業報告会を開催。平成26年度の健康教育推進学校は、最優秀校として西和賀町立湯田小学校(岩手県)、杉戸町立西小学校(埼玉県)、熊本市立出水南小学校(熊本県)、熊本市立花陵中学校(熊本県)、東京都立赤羽商業高等学校、愛知県立ひいらぎ特別支援学校が表彰され、優秀校、優良校も合わせて103校が表彰された。
最優秀賞の受賞校 |
開会式の冒頭で日本学校保健会の横倉義武会長は「いずれも、家庭地域と一体になり取り組んでいる学校ばかり。各審査員も選考に際してはご苦労されたと聞いている」と述べ、最優秀校、優秀校に表彰状を手渡した。
受賞校を代表して西和賀町立湯田小学校の白石健也校長が「学校・家庭・地域の方々の長きに渡る実践が評価された結果で、この受賞はさらに精進し、継続していくためのもの。連携協力し、健康教育の推進のためにさらに活動を進めていくことを誓う」と謝辞と共に活動継続を誓った。
今回の受賞は、最優秀校6校の他優秀校は15校、特別協賛社賞は2校(優秀校)、優良校82校へ贈られた。表彰式後、最優秀校6校の事例が各校の代表者より紹介された。
力を100%発揮できる身体作り
<岩手県西和賀町立湯田小学校>
開校4年目、児童数91名の小規模校。旧沢内村村長が打ち出した「生命尊重行政」の思想を引き継ぎ、町全体で健康増進に取り組んでいる。町内の保育所、小・中学校、高校で組織する学校保健会があるのも特長だ。
そんな中で同校は、歯の健康、基本的生活習慣の確立、バランスの良い心と体を健康課題とし、学校生活において自分の力を100%発揮できる身体づくりを目指し、「健康オリンピック」に取り組んでいる。
「健康オリンピック」では、「背中シャキーン週間」や「風邪ブロック1、2、3」での自己評価、親子で取り組む年5回の「けんこうしゅうかん」活動で生活リズムや歯科保健の項目について、家庭と共に実践。
全校の半数以上がスクールバス登校で運動不足にあることから、運動好きの子を育てようと、曜日ごとに動きを変えた5分間走、雪で校庭が使用できない時期は体育館でのエアロビクス、全校縄跳びなどにも取り組む。
総合を活用して教科横断的活動に
<埼玉県杉戸町立西小学校>
健康教育を学校経営の柱の一つとして校内研究に位置付け、平成26・27年度は埼玉県体力課題解決研究校として取り組んでいる。
その一つとして、児童の委員会による生活習慣の改善をめざし、保健委員会、給食委員会、運動委員会が活動の強化週間・月間を設置。今年度5月と12月の変容を比較すると、朝食を毎日食べる児童は95%から96%へ、8時間以上の睡眠は85%から90%へ、1時間以上の外遊びは75%から78%へとそれぞれ向上した。
特徴的な活動として、各教科で学んだ知識を核に3・5・6年生の総合的な学習の時間で健康教育を実施。総合で発展的に探究し、まとめ発表を行う教科横断的な健康教育を推進している。
危険回避力を育てるため、1年生を対象にCAP(Child Assault Prevention)研修を実施。いじめや誘拐に対するロールプレイなどを通して、断り方、困った時の対処法を学ぶ。
これらの取り組みから、子供の自己有用感が高まり、不登校ゼロ、学力向上にもつながったという。
児童生徒が取組を発表 |
交流活動通じて心と体を健康に
<熊本県熊本市立出水南小学校>
児童数788人の大規模校。交流・体験・体力づくりを中心にした健康教育を行っている。
交流活動の一つは隣接する熊本支援学校との交流教育で、同校独自の「こころの教育」として創立時の昭和55年から35年継続。全校を挙げた交流集会を6・10月に、中学年は週に1回支援学校のパートナーとの交流活動を実施している。
地域との交流・連携の機会も多く、昔遊びやふれあい給食、水前寺もやしの種植えと収穫、雑煮会などを通して心と体で大切なことを感じている。
主体的な実践力を育てるために、生活習慣改善に取り組む。「スマイル集会」と呼ばれる学校保健委員会には、4〜6年生が参加。具体的な目標を立て、実践、振り返りを経てより健康的な生活習慣づくりを目指す。
健康目標やなりたい自分を意識して生活した人は83%と意識がかなり高く、健康目標を半分以上達成している児童は9割以上だ。
保健委員を中心に歯ピカ運動を実施
<熊本県熊本市花陵中学校>
基本的生活習慣の育成を研究の基盤とし、全職員で様々な角度から取り組み、学校全体で健康教育を組織化。中でも、年3回実施する学校保健委員会は、健康教育の推進に大きく貢献している。
平成26年度の新たな取り組みとして、学校歯科医、市の職員、8020推進員の指導を受けた保健委員が、「花陵歯ピか運動」を7月に実施。給食後の普段の歯みがき後、水道の蛇口が多い調理室と理科室で保健委員の指導により歯垢染め出しを行い、正しい歯みがきの定着を目指した。
また、心の健康を育むために校舎内には、心を動かす詩や言葉、花などの掲示物を充実させている。校長の奨励による俳句の取り組みは、心を落ち着かせることが目的だ。
中学生に地域に貢献してほしいという声が上がったことをきかっけに、全生徒が月2回通学路のゴミを拾いながら登校する「町ピか登校」など気づき・考え・実行できる生徒を育んできた。
区と連携した安全教育の実践
<東京都立赤羽商業高校>
「安全教育の推進」「健康づくりの推進」を教育ビジョンの主要施策に掲げる都の方針を踏まえた、多角的な健康教育が特長。
9月に地域と連携して行った「大防災訓練」では起震車体験や炊き出し体験、校内での宿泊体験を実施。8月の地域防災訓練には生徒会役員が全員参加。「災害時には高校生の若い力が必要だ」との期待に応えられるように訓練を受けた。
また、計画的な保健講話を主に1年生に実施。学校歯科医の講話、救急救命講習、助産師のいのちの話、デートDVの4種を軸に、薬剤師によるセーフティ教室も開催。
20%の生徒が朝食未摂取の現状を受け「お弁当コンクール」を開催し、自らの健康を考える姿勢を身につけようとしている。保健だよりを使用して各クラスで保健委員が説明し、10月には金・銀・銅賞を決定。文化祭では各賞の発表後、朝食と口臭の関係について演劇部が寸劇で説明した。
都の方針の下、区の協力を受けながら健康教育に取り組む好事例だ。
4つの実践柱に近隣校とも連携
<愛知県立ひいらぎ特別支援学校>
肢体不自由特別支援学校で、148名の児童生徒が在籍。個に応じた健康教育、保護者・地域・関係機関と連携した活動、安全に配慮した教育、医療的ケアにおける校内体制の工夫の4つの実践が健康教育の柱だ。
個に応じた健康教育の実践として、健康観察カードの活用、養護教諭による保健指導、運動会での発表などが特長のある活動。給食前には「顔体操」を取り入れ、口周りの過敏さを軽減する。
隣接する高校、近隣の小中学校や地域住民との交流及び共同学習を積極的に実施。半田農業高校3年生の学校設定科目を選択した生徒とは「グリーンライフ交流」を行い、農作物にふれる機会の少ない児童生徒の貴重な体験の場となっている。
小中高で一貫した指導を行うことで、子供たちは自分の身体の特徴を知り、自分なりの生活習慣を見つけつつある。
【2015年3月23日号】
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