秋田・川連漆器が新商品を開発<秋田県漆器工業協同組合>

持ちやすくて運びやすい給食での耐久性も評価 

 約800年の歴史を持つ秋田県の川連漆器は使いやすさを重視した漆器「たなごころ」と「ひとさじ」を開発。障がい者や高齢者なども、持ちやすく口元に運びやすい2種の使い勝手に関する報告が、東京聖栄大学で行われた(主催=秋田県漆器工業協同組合)。

 

たなごころ(横)
「たなごころ」はお椀の下のつま
み部分(高台)が通常より高い
ひとさじ(弓)
「ひとさじ」は持ち手がカーブし
手にとりやすい(写真は「弓」)

持ちやすさに特長を持った「たなごころ」

  飯椀、汁椀、小鉢、中皿、小皿の5点からなる「たなごころ」は、片手で椀を持ちやすいように、お椀の下のつまみ部分(高台)が通常のお椀よりも高く、手をかけるくぼみが高台の外回りについているのが特長。椀と皿は大・中・小の順に重ねられ、収納しやすい。

  持ちやすいスプーンとフォーク「ひとさじ」

  木製のスプーンとフォークのセット「ひとさじ」は、「先丸」「中丸」「後丸」「ハネ」「弓」の5種類の形状がある。持ち手部分がカーブしており、テーブルの上から簡単に手に取ることができる。

  デザインに携わった秋田公立美術大学助教の菅原香織氏は、祖母への食事介助体験を踏まえ「思うように体が動かなくなっても、出来る限り自分の手で食器を持って食べたいはず。『たなごころ』は介護されていることを意識させないよう、出来る限り普通の食器と同じデザインに近づけた。『ひとさじ』は箸のような感覚で扱えるスプーンやフォークならば、介護食でも満足感が得られるのではないかと意識した」と語る。

  東京聖栄大学学生が洗浄と耐久を試験

  また、食のプロを育てる東京聖栄大学では、管理栄養士の立場から、集団給食において食器に何が求められるかを考察。管理栄養学科の3年生7名が「たなごころ」を使って食器洗浄の検査と食器耐久試験を行った。

  洗浄検査では食事後の「たなごころ」を洗浄後、でんぷんやタンパク質の残留を検査。メラニン樹脂の食器では残留していたタンパク質や洗剤がきれいに洗い落とせていることが明らかとなった。

  耐久試験ではコンベア式洗浄機で100回洗ったが、目立つ損傷は見られなかった。これまで耐久性の問題から漆器は集団給食での使用が難しいと思われていたが、食器洗浄機に耐えうる十分な耐久性が確認された。

  デザインするにあたり、何度も手に取り口に運びながら大きさを調整したという菅原氏。試行錯誤を重ね、口から引き抜く際に引っかからない流線形のデザインが完成した。漆器ならではの口当たりの良さは、楽しい食事の時間を演出してくれる。

【2015年3月23日号】

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