大学在学中に起業した矢島さん(右端) |
小中学生からの企業家教育の重要性を協議し、今後のアクションを考え英知を結集する場の発足を目的として、3月3日に都内で「第1回若年層起業家教育推進シンポジウム」が開催され、内閣府、文部科学省、経済産業省からも来賓を迎え、基調講演及びパネルディスカッションが行われた。起業希望者は1997年に160万人台であったが、2012年には半減(2014年版中小企業白書)。急激な減少の背景には「起業意識」「起業後の生活・収入の不安定化」「起業に伴うコストや手続き」があるとされており、"教育制度が十分ではない""起業を職業として認識しない"ことなどの課題が挙げられている。
教員はファシリテーターかつコーディネーターに
来賓の文科省初等中等教育局教育課程課長の合田哲雄氏は「日本の強みは現場の教員のモラルが高いことだが、なんでも自分でやろうとしてしまうことが弱み。起業家教育は強みを伸ばして教員がファシリテーターでコーディネーターになることが大事」とあいさつ。
パネルディスカッションには、大東文化大学経営学部教授の松尾敏充氏、日本政策金融公庫創業支援部部長の山田康二氏、トーマツベンチャーサポート(株)事業統括本部長の斎藤佑馬氏、(株)和える代表取締役の矢島里佳氏が登壇。起業家を育てる立場、支える立場、起業家という立場からそれぞれの意見を交わした。
学生を育てる側の松尾氏は「出会いから学ぶことは多い。学生時代はベンチャー企業の人にたくさん会うこと。我々には、うまくいっている起業家がこのような人だと伝える力が求められている」と指導者としての思いを述べた。
課題解決がミッションに伝える機会の増加を
企業内ベンチャーとして起業した斎藤氏は、高校生の起業家教育「ドリームスクール」を開講し、高校にその学校のOBで起業した先輩を呼び、身近な人の起業ストーリーを話してもらう仕組みを作っている。「最初は引いた目で見ていても、終わると目が変わる。社会の課題を解決するきっかけが彼らのミッションになる。ただ、伝えられる母数が少ないことが課題」と現状と課題を話す。
三方よしの近江商人を手本にした起業家教育
自らが大学在学中にビジネスコンテストに出場し、その副賞で起業した矢島氏は、「起業して博打をしているようにみられるが、よく考え設計した上で進めている。近江商人の考えである"三方よし"の論理的思考に子供たちをどのようにもっていくかが新しい起業家教育ではないか」と提言。
高校生のビジネスコンテストに携わる山田氏は「学校教育に取り入れてほしいが、先生次第というところがある。そういう先生は学校や地域の核となり、地域の活性化に役立っているケースが多い。新しい支援機関を作りモデルケースを作る必要がある」と述べた。
推進協議会を発足
このシンポジウムを踏まえ、4月1日から「若年層起業家教育推進協議会」が展開され、実践的で持続性のある活動が推進される予定だ。初代理事長は、日本の資本主義の父「渋沢栄一」の玄孫である渋澤健氏が務める。同シンポジウムは、早稲田大学発のベンチャー企業である(株)セルフウイングとナガサキ・アンド・カンパニー(株)が開催。
【2015年3月23日号】
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