【PTA大会特集】子供の安全、教育の諸課題と保護者の役割を考える

全国高等学校PTA連合会 佐野元彦会長

高等学校のPTA活動を通じて青少年の健全育成に努める、一般社団法人全国高等学校PTA連合会(以下=高P連)。8月21日から23日まで福井県で開催される「全国高等学校PTA連合大会」を踏まえて、6月の総会で新会長に就任した佐野元彦会長に今後の活動方針などについて話を聞いた。

スマホ、交通マナー等 実効性ある取り組みを

<情報リテラシー>スマホ利用9割に 保護者の意識高める

高校2年生を対象とした「全国高校生生活・意識調査」は、これまで文部科学省等の助成を受けながら隔年で調査を実施してきましたが、平成25年度から自主財源で行う独自事業となりました。25年度の調査結果については、今年3月に報告書を加盟校単Pに配布しました。26年度も引き続き調査を進め、27年度の全国大会で研究結果を発表する予定です。

注目しなければならないのが、近年問題のスマートフォン(スマホ)をはじめとした高校生のインターネット使用状況です。スマホの使用状況は25年度調査では9割近くに達しています。

高校入学と同時に子供にスマホを持たせる保護者が多いようですが、約半数の保護者が使用に際してのルールを設けていないなど、ネット利用に関する危機意識が低いことが問題です。

スマホは多くの情報が得られる反面、ネットの裏側には様々な危険が潜んでいることを忘れてはいけません。ネットを通じて子供が危険にさらされることが無いよう、高校生や保護者の情報リテラシーを高める必要があります。

安全なネット利用に向けて、今年6月に内閣府「インターネット環境の整備等に関する検討会」に提言を行い、高校生や保護者へのリテラシー教育、スマホのフィルタリングの重要性などを伝えました。

さらに薬物の問題が高校生のスマホの所有率上昇と関連しており、ネットを通じて危険ドラッグを入手する可能性があります。若年層を中心に危険ドラッグの使用が広がっているため、高P連でもパンフレットを作成するなど薬物乱用防止運動を展開しています。

薬物の危険性を伝える一方、子供がネットから犯罪に巻き込まれる可能性があることを啓発して参ります。

<交通安全>バイク、自転車、歩行者 マナーアップ運動を展開

交通マナーの課題が多様化したことから、従来の「バイクの3ない運動」を新たに「自転車、バイク、歩行者のマナーアップ運動」として展開しています。「バイクの3ない運動」で提唱してきた「免許は取らない・乗らない・買わない」を踏襲しつつ、高校生が「被害者にならない、加害者にさせない」ことを目的に、バイクだけでなく自転車や歩行者のマナー向上を目指します。

また、事故で加害者となってしまった高校生への対策として、賠償責任補償制度を設けており、学校に加入を勧めています。高校生が加害者となる事故は年々増え、特に多いのが自転車による事故です。

お金の問題だけに限らず、事故で相手を傷つけてしまったことは子供に大きな心の傷を残します。そうした心の負担を少しでも軽くするためにも、マナーアップ運動と賠償責任補償制度の両面から取り組んで参ります。

<災害支援>義援金募集は継続 被災地の現状を伝える

東日本大震災で被災した高校生の支援に向けて、全国の会員から義援金を募り、平成25年度も400万円強が集まり、福島県P連に贈りました。福島県沿岸部の高校生は今も避難を余儀なくされ、サテライト校で授業を受けている生徒もいます。そうした生徒の助けに少しでもなればというのが全会員の願いであり、今後も支援を呼びかけていきます。

同時に被災地の現状を全国のPTA関係者に伝えることも、高P連の役割と考えます。

「教育と考福」テーマに 全国大会を開催

福井で開催される全国大会では「教育と考福」をメインテーマに掲げ、講演や分科会を通じて子供達の「しあわせ」について考えます。

出生率が減少する中、福井県は出生率、共働き率や三世代同居率も高く、家族で子供を育てる姿勢には見習うべきものがあります。各分科会では福井県に関係した助言者からの指導もあり、福井に秘められた力が課題解決の糸口になることを期待します。

校種や地域の壁をなくし縦横の連携で課題解決

今の子供は、人と直接会って話をすることや、触れ合う中で傷つくことを恐れているように感じます。相手の顔を見なくてもコミュニケーションを図れる時代ではありますが、協力して物事を達成する喜びなど、人と直に接することで培われる能力や感情があるはずです。

子供達が現実から目をそらさずに立ち向かっていく機会を増やしたいと考えており、その大切さを会員にも呼びかけていきたいと思います。

また、様々な壁をなくすシームレス化が求められます。縦のつながりでは小中高のPTAが個別に活動するだけでなく、課題によって互いに連携を図ることで実効性のある活動につながるのではないでしょうか。横のつながりでは地域のPTAが学校の垣根を越えて協力することで、子供を見守る体制もより強固なものとなります。すでに行われている先進的な事例があれば積極的に取り入れて参ります。

そのために、今すぐの実現は難しいですが、高P連内にシンクタンク的な機能を持つ必要があると以前から感じていました。意義のある調査をしても今は結果発表で終わってしまいます。結果を受け止め改善や向上につなげた優れた事例や施策を集め、分析し、全国に広めたり行政への提言につなげたりする取り組みが必要です。

■第64回福井大会 8/21-23

第64回全国高等学校PTA連合会大会は福井県福井市、鯖江市、越前市、敦賀市の各会場で、8月22日に開会式と基調講演、研究発表、4つの分科会と2つの特別分科会、23日は記念講演と閉会式が行われる。
「教育と考福」が全体テーマ。4分科会の課題はそれぞれ(1)学校教育とPTA〜真の信頼構築への啓発、(2)進路指導とPTA〜立志と目標追求への啓発、(3)生徒指導とPTA〜連携・協働への啓発、(4)家庭教育とPTA〜家庭教育力への啓発。

http://www.fukuitaikai.com/

日本PTA全国協議会 尾上浩一会長 >>

【2014年8月18日号】

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