学校コーディネーターとしての養護教諭

子供達を取り巻く様々な健康課題の解決は、学校一丸となって取り組むべきもの。その中でコーディネーターとして活躍する養護教諭は、日々どのような心構えや研鑽を積み業務にあたることが重要か。6月に総会を終え会長2年目を迎えた全国養護教諭連絡協議会(全養連)の濁川こず枝会長(群馬県桐生市川内中学校養護教諭)に話を聞いた。

「保健室経営改革」で課題解決を 周囲を巻き込んだ対応に

■【全養連の本年度の活動】調査研究をWeb化 考察時間を確保する

濁川こず枝会長
全国養護教諭
連絡協議会
濁川こず枝会長

本協議会としましては、基本的には昨年度までの方針を踏まえ、継続した活動に取り組んで参ります。大きな変更点としては、毎年実施する調査研究活動を、Webを通じて行うようにしたことが挙げられます。

入力やグラフ化などの作業の手間が省ける分、考察に時間が充てられるため、そこから今後の方向性や課題を見出すことが可能となります。

養護教諭として足元を見直す

また、今後は夏の研修会や2月の研究協議会を通じて、救急処置や保健室経営、アレルギー疾患への対応など、養護教諭が果たすべき役割を考え、「自身の足元を見直すこと」が活動のポイントとなってきます。

まずは、「保健室経営計画」の作成から考えてもらいます。保健室経営計画は自校の健康課題への方策を明確化し、養護教諭が目標を持って保健室を運営していくために欠かせないものですが、実際に計画を立てていない養護教諭もいるのが現状です。

保健室経営計画を立てると自分の果たす仕事が見えてくるのと同時に、達成度について他者評価が得られます。

来年2月の研究協議会では、文部科学省の岩崎信子健康調査官から保健室経営計画について「講演」ではなく「講義」を受けられる機会を設けました。

■【広がる養護教諭の活躍】救急処置・アレルギー 適切な処置を学ぶ

救急処置に関しても、夏の研修会で専門的な講義を実施します。日常的なケガや病気などは養護教諭が適切な救急処置を行うことで、取り返しのつかない事態を避ける重要なものとなります。

アレルギー疾患については文科省による研修会が各地で開催され、校内で対策委員会を設けることも進められていることから、多くの先生方が関心を寄せています。体制づくりが整うことで、これまで以上に養護教諭が綿密に個別の対応を取り、事故の未然防止につながると考えます。

変わる健康診断 保健調査が重要に

学校の健康診断は、平成28年度から内容が大きく変わります(座高、寄生虫卵検査が除外、四肢の状態を追加)。

より的確な診断のために、健康診断の前に「保健調査」を実施し、児童生徒の健康状態を十分に把握することが求められます。

10年以上前に除外された色覚検査についても、職業規制により卒業後に問題となるケースが生じるなどの状況を鑑み、28年度と言わず今年度からでも学校医と相談し、対応を考えてほしいと思います。

■【養護教諭に求める力】異動でも途絶えない 保健室づくりを

また、自校だけでなく、学校所在の地域から全国まで情報網を広げ、社会の動向などを吸い上げる力を養ってほしいと思います。

同時に、作り上げたものが異動により途絶えぬよう、次につなげる体制づくりも大事です。

そのためには、校内で他教員と連携を深めることが鍵です。問題解決は周囲も巻き込んで対応することが、児童生徒のためになると心がけてください。

本協議会は、これらの解決やヒントとなるように研修や研究誌(『瑞星』平成27年1月発行予定)を通じて、仲間の力になる実践や情報を紹介していきます。

会長に任命され2年目ですが、一人ひとりの声を全国的な活動へと反映するために、協議会未加入の県や研究会への働きかけが課題と考えています。

様々な健康課題に一人職として忙しく対応する私達の現状を理解してもらい、養護教諭の地位確立につながるような活動を続けて参ります。

【2014年7月21日号】

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