文部科学省は、学校における性同一性障害への対応に関する現状を把握し、対応を充実させるための情報を得ることを目的に、「学校における性同一性障害に係る対応に関する状況調査」を実施した。今回の調査で性同一性障害として報告のあった件数は小学校低学年26件、同・中学年27件、同・高学年40件、中学校110件、高等学校403件の計606件で高等学校が6割以上を占める。児童生徒が望まない場合は回答に反映しないため、さらに実数は多いと推測される。
学校段階 | 割合 | 件数 |
小学校低学年 | 4.3% | 26件 |
小学校中学年 | 4.5% | 27件 |
小学校高学年 | 6.6% | 40件 |
中学校 | 18.2% | 110件 |
高等学校 | 66.5% | 403件 |
同調査は、昨年4月から12月にかけて全国を対象に行ったもの。医療機関を受診しているケースは42・4%で、性同一性障害との診断があった数は165件だ。戸籍上の性別は、男39・1%、女60・4%である。
性同一性障害のある児童生徒は、本人が性別違和感を持ちながら、他の性別に適合しようとするため、学校での活動をはじめ日常生活での悩みなど、心身の過大な負担が懸念されており、文科省では管理職や学級担任、養護教諭、スクールカウンセラーなど教職員が協力して教育相談にあたるように通知を発している。実際の学校体制としても、教委、学校、カウンセラーとの連携で養護教諭の役割が大きくなっている。
学校全体で見ると、性同一性障害への特別な配慮を行っている事例は約6割、配慮を行っていない事例は約4割。全体では、職員トイレや多目的トイレの使用を認める「トイレに関する配慮」(41・4%)、保健室や多目的トイレを更衣室として使用することを認める「更衣室に関する配慮」(35・3%)が多い。
校種別に見ると、小学校低学年女子では男女の色分けを避けるなどの「学用品の配慮」、同・高学年では「宿泊研修(修学旅行含む)の配慮」として1人部屋の使用や入浴時間をずらすなど、中学校女子では自認する性別の制服着用を認めるなど「服装の配慮」などの割合が高い。
他の児童生徒や保護者に対して「秘匿している」は半数近い43・1%、「ごく一部を除いて秘匿している」は14・4%、「秘匿していない」事例は22・4%。
個々の事例を見ると、小学校低学年で性同一性障害のある男子児童の場合、入学前に保護者から相談があり、医師と学校職員が保護者同席の下で面談。トイレ、通称の使用、水泳などで配慮がなされ、本人や周りに特別な扱いをしているように受け取られないよう、全校職員の共通行動で対応した。現状、児童は女子として元気に生活しているが、小学校低学年であるため今後は成長に伴う配慮が課題とされる。
中学校女子のケースでは、入学前に本人や保護者と打ち合わせを行い準備を進め、入学後は全校生徒や保護者に公表。本人が自認する性別で学校生活を送れるようにした結果、本人は男子として学校生活を送り、他の生徒も男子として接するなど安心して学校生活を送っている。
上記の事例からも、保護者や職員、他の児童生徒など周囲の理解、さらにはトイレ・更衣室など細やかな配慮が児童生徒の負担軽減につながると思われる。
【2014年7月21日号】