すべての栄養士を栄養教諭に

長島美保子会長
全国学校栄養士 協議会
長島美保子会長

食育基本法の施行と同年に始まった栄養教諭制度。栄養教諭は、学校給食の管理と児童生徒への指導を両立させ、様々な教科と連携して児童生徒の心身の健康を「食」という観点から守り続けている。しかし、学校給食を実施している全校に配置されているわけではない。全国学校栄養士協議会(全学栄)の長島美保子会長に平成26年度の活動内容や、学校給食、栄養教諭・学校栄養職員が今後目指すべき姿を聞いた。

栄養教諭が主体的に授業を

食に関心を持ち自らの健康管理ができる児童生徒の育成めざして

全学栄の本年度の活動

平成26年度は、協議会として大きく3つの事業に着手していきます。

免許状の更新講習 授業力・方法論学んで

まずは、栄養教諭免許更新の講習です。平成17年に施行され配置が始まった栄養教諭も26年2月1日から免許状更新講習受講の対象となりました。本協議会では、専門(選択)領域18時間の講習を3日間にわけて開催します。

今後10年の栄養教諭の資質を高める機会となります。必修領域12時間については他大学で学ぶことになりますが、専門職としての知識はこの3日間で学ぶことができます。

専門職として、学校給食管理や食物アレルギーなど、個別相談指導及び、年間の指導計画に沿って授業を到達させる指導者としての技術や方法論をきちんと学んでほしいと思います。

「指導書」の作成で 献立・教材作りに貢献

次に、食に関する指導のあり方をまとめた指導書を作成したいと考えています。栄養教諭は学校給食の管理と食育の指導両方を担い、その先には児童生徒の笑顔や心身の変容があります。

しかし、優れた献立、教材を自分だけで作りあげていくのは大変な仕事量です。本協議会としては、昨年1年をかけてカリキュラムの検討を続けてきました。そこから一歩踏み出して、今年は食育を根付かせるための年間指導計画を考えて、仲間たちに伝えていきたいと思っています。

これまでは各教科の軒先で授業を行うような形の指導が多かったのですが、栄養教諭自身が主体的に授業を進めていくことを願っています。

アレルギー調査を実施 課題の解決に向けて

7月1日から15日にかけて実施した食物アレルギー調査も、本年度の重要な事業となっております。

前年度のプレ調査を経てこの本調査に臨みました。学校給食を実施している全都道府県の給食センター、学校に入力コードをお送りし協力が得られるように進めて参りました。

昨年、文部科学省でも、食物アレルギーに関する調査を実施しましたが、本協議会で実施した調査との比較検討も行い、大きな成果が得られることを期待しています。12月末には調査結果をまとめ、報告することができるよう、めざしています。

学校給食のあり方

先般、ある地方自治体において、一定期間、学校給食での牛乳を試験的に中止する試みを行うという情報があり、その是非について各方面で議論が行われています。本協議会としましては、意見書という形で発信させていただきました。

成長は待ったなし 子供達を第一に

大切なことは、子供達を中心に据えた取り組みであるのかということです。小中学生は待ったなしの成長期にいます。試験的に行うのであれば、結果を十分な形で検証してほしいと願います。

今後の栄養教諭

学校給食は義務法ではなく、実施率は小学校で99・2%、中学校で85・4%(H24年度調査)です。栄養教諭についても「配置することができる職員」という扱いで法的にも弱い立場です。栄養教諭は全国で5021名(平成26年4月1日現在)。栄養士全体の数から考えると、まだ半分にも到達しておりません。

置かなければならない 職員の位置を目指す

しかし、学習指導要領には「食育」が明記されています。荷物は背負っているが担保はできていない状況なのです。本協議会としては、将来的には学校給食を全学校で実施し、栄養教諭が全校に「置かなければならない(学校教育法第37条)職員」という立ち位置をめざして、研鑽して参ります。

【2014年7月21日号】

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