"輸入食材"学びのきっかけに 食育と輸入食材<本紙調査>

社会科などで、日本の食料自給率の低さについて児童は学んでいる。では"食育"の視点で"輸入食材"を学ぶ機会は確保されているのか。本紙は学校の食育における輸入食材の扱いについて、食育推進の核となる全国の栄養教諭・学校栄養職員を対象にしたアンケート調査を実施。実際に口にする機会が多い輸入食材だが、食育の題材として輸入食材を扱ったことがあるという回答は全体の3分の1(33・7%)。

食料自給率の現状背景に 教材や情報の提供が課題

食育で扱いやすい輸入食材

学校給食は食育の生きた教材であると言われ、積極的に地場産物を取り入れ、献立と連動した食育の実践が活発に行われている。

一方、豊かで栄養バランスに優れた学校給食を維持するために、日本の低い食料自給率では輸入食材に頼らなければならない現状がある。

そこで本紙は全国の栄養教諭・学校栄養職員2000人を対象に、「食育と輸入食材に関する調査」を実施(調査期間5月下旬〜6月中旬)、264件の回答を得た(有効回収率13・2%)。

■「情報がない」3割

輸入食材を題材に扱ったことがあるかを聞いたところ、「はい」は33・7%で全体の3分の1。また「いいえ」は63・3%、「予定している」が2・7%だった。

扱わない理由を割合の多い順にあげると、「教材や情報がない」(28・1%)、「生産や流通が身近でない」(26・3%)、「食育の時間がない」(20・4%)、「指導方針にそぐわない」(14・4%)、「必要と思わない」(12・0%)、「教科との関連が分からない」(7・2%)となる。

食育の教材として地域・郷土に密着したものを取り上げることが推奨されているため、輸入食材の割合は少なくなっていると推測される。「地場産物を扱うだけで手いっぱい」、「輸入食材まで扱う余裕がない」という記述もあった。

■6割はフルーツ類

では、食育で扱いやすい輸入食材というのは何が選ばれるのだろうか。

ベスト3は「バナナ等フルーツ類」(59・5%)、「小麦粉類」(43・6%)、「魚介類」(32・6%)。給食の献立として身近に使われている食材が上位に選ばれているほか、小学校の場合「魚介類」は教科との関連から選ばれたと思われる。

■多様な学習形態

食育では一斉授業以外にもグループでの学習など様々な形態での実践が行われている。

今後取り入れたい形態としては、半数以上が「体験参加型学習」(54・5%)となり、半数近くが「グループ学習」(49・6%)と回答。他に多いものとしては「調べ学習」(37・5%)、「調理実習」(同)、「実験・観察」(27・7%)などが挙げられた。

扱う食材やテーマにより、多様な指導の形態がありえると言うことができる。

■「食料自給率」を重視

輸入食材の中で、子供達に身近でなじみの深い食材の一つとしてチョコレート・ココアなどのカカオ類が挙げられる。

そこでカカオ類を例に、食育の授業を行う場合に最も重視されるポイントを聞いたところ最も多かったのが「食料自給率と輸入」(53・4%)であった。

続いて「健康へのメリット・デメリット」(41・7%)、「栄養」(37・1%)、「生産の技術・仕組み」(35・6%)などがほぼ同率。「食品を選択する力」(27・7%)も3割近い。

授業で必要、あれば役立つと思われるのは「掲示できる実物」(64・8%)と「製造工程などのビジュアル教材」(48・9%)、「指導事例集」(36・7%)がベスト3となった。

■栄養価や文化に注目

続いてカカオ類を題材とする場合に、使いやすいテーマは何か聞いたところ、「チョコレートとポリフェノール」や「チョコレートと食物繊維」、「チョコレートとミネラル成分」など、食材の栄養価からのテーマ設定が多くあげられ、献立との関連がみられる。

また「世界のチョコレートに関する文化や習慣」といった、食材の背景にある文化的な側面に学習を広げたいという思いもあった。

さらに「非常時の食品としてのチョコレート」など、"防災教育"の課題を意識したテーマには今日的な問題意識が働いているようだ。

■給食ではパン・ケーキ

学校給食で多くカカオ類が使用されるメニューは「カカオパン」、次いで「ケーキ」、「ムース」、「プリン」、「ペースト」、「エクレア」、「飲料」、「パフェ」、「ドーナツ」などで、全体傾向としては主食、または主食とともに提供されているケースが多いようだ。

【2014年7月21日号】

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