専門性を「深化」させ不可欠な養護教諭に―全養連が研究協議会開催

 全国養護教諭連絡協議会(全養連)は、2月21日に都内で「第19回研究協議会」を開催。「時代の変化に対応した養護教諭の役割を追究する‐養護教諭の専門性の深化を求めて‐」を主題に、資質と実践力を高めていく養護教諭の姿を追究した。

  当日は、プラネタリウム・クリエーターの大平貴之氏の特別講演に始まり、文部科学省健康教育調査官・岩崎信子氏の基調講演、千葉大学教育学部教授の岡田加奈子氏をコーディネーターとしたフォーラム「養護教諭の専門性の深化を求めて」が行われた。

  岩崎氏は、基調講演「健康教育の推進と養護教諭の役割‐養護教諭の職務と保健室経営‐」の中で、保健室経営計画を立てることの重要性とその立て方を中心に説明。「学校経営計画を視野に入れて保健室経営計画を立てると視野が広がる。学校になくてはならない存在になってほしい」と語った。

健康課題を把握し評価計画を明確に

 全国養護教諭連絡協議会「第19回研究協議会」では、基調講演及び、フォーラムで養護教諭の専門性が語られた。

■基調講演
保健室経営計画は 周知と評価が重要

全国養護教諭連絡協議会
健康観察を用いた情報発信や保健室
登校支援ソフト活用の成果を報告

  「組織的な健康相談の推進」を図るためには「保健室経営計画」が重要となるが、平成22年の調査によると保健室経営計画を策定していないとの回答が27%、さらに、保健室経営計画の「他者評価」に取り組んでいないケースが56%だ。

  健康教育調査官の岩崎信子氏は「自分では評価しているが他者評価が行われていない」と指摘し、課題解決型の保健室経営計画を立てるためには、全職員に周知することが重要であると述べた。

  保健室経営計画の作成に当たりまず重要となるのが、自校の児童生徒の心身の健康課題を的確に把握すること。その上で学校教育目標、学校保健目標(重点)、保健室経営目標との関連性を持たせ、原案を作成するが、それと併せて評価計画を作ることも必要だ。評価は、「誰が」「いつ」「どのような観点で行うか」などを明確に、と話す。

  全国大会の分科会等で発表した養護教諭からは、課題解決型の保健室経営計画を作った成果として、「生徒の健康課題について共通理解や課題意識が高まり、学校全体で課題解決に向けて取り組むことができた」などの報告があがっているという。

専門性の深化は実践力の向上 学校経営に不可欠な存在へ

■フォーラム
保健室からの発信を学校全体に知らせる 

  フォーラムは「養護教諭の専門性の深化を求めて」をテーマに、千葉県香取市立佐原小学校養護教諭の小林芳枝氏、大阪市立御幸森小学校指導養護教諭の松永かおり氏、静岡市立伝馬町小学校養護教諭の秋澤真里氏が登壇。

  小林氏は健康観察の活用を中心に、組織をあげて健康教育に取り組んでいる。健康観察の結果を用いて、(1)毎日欠席状況を管理職に報告、(2)「感染症情報収集システム」に入力し地域の感染発症状況を把握、(3)感染症流行時にはお知らせや日報で校内の発生状況を全職員に早期に知らせる、(4)保健だよりで予防啓発の4点に重点を置き、常に保健室からの情報発信が全体に伝わるよう思案している。

  計画・実施・評価・改善(PDCA)を行うためには、企画力・実行力・指導力・コーディネート力・マネジメント力などが必要で、その力を十分発揮できるようになることが「深化」ではないかと述べた。

時代で変わる教材作成 必要不可欠な養教に

  大阪市の指導養護教諭として後進の指導にもあたっている松永氏は、指導教材の変化等について報告。かつて手作業で行っていた教材の作成が、昨今ではパソコンで作成し視覚に訴えられる教材を提示できるようになった。

  大阪市では養護教諭出身の管理職も増えており、松永氏は、養護教諭は学校教育において必要不可欠で、学校経営においても要となっていることから、その専門性を発揮していきたいと話す。

得たものを情報発信 児童に大きな変容

  秋澤氏は、児童がその日の健康状態を10段階で担任に報告する朝の健康観察を重点的に行っているが、保健室登校の支援方法に悩みもあった。その頃、県の研究会で保健室登校支援ソフトの開発に携わり、それを活用して校内支援体制を機能させるための実践を行ったところ、児童に大きな変容が見られたという。

  「得たものを情報発信する大切さを実感し、さらに自分の力量を高めなければという気持ちが以前に増して強くなった」と語る。

  最後に、コーディネーターの千葉大・岡田氏は「深化」は「実践力の向上」だとし、「得意な分野をつくる」「役割を振られたらチャンスと捉えて取り組む」「組織的にグループで情報交換を行う」の3つが、実践力向上の鍵であると述べた。

【2014年3月17日号】

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