血圧が上昇傾向に―児童生徒の健康状態サーベイランス報告

 (公財)日本学校保健会は、2月20日に都内で日本学校保健会の事業報告会及び全体会を開催した。「平成25年度健康教育推進学校」の表彰式及び実践事例発表会も行われ、最優秀校6校、優秀校10校、特別協賛社賞(日本コカ・コーラ(株)/アクエリアス)2校、優良校66校が決定。最優秀校は事例発表を行い、学校・家庭・地域で取り組む健康教育活動が紹介された。

小学校低学年でも"小太り"はリスク

平成25年度健康教育推進学校
健康教育推進学校最優秀校の代表者

 全体会では、「児童生徒の健康状態サーベイランス委員会」と「保健学習授業推進委員会」の報告が行われた。

  「児童生徒の健康状態サーベイランス委員会」(委員長=大関武彦・共立女子大学看護学部学部長)は、平成25年1月から3月に実施された平成24年度の調査について発表(小中高1万2248名)。24年度調査から、メンタルヘルス、アレルギー様症状については調査票が全面改訂され、リスクファクターについては腹囲の値が加えられた。

  調査によると、肥満の頻度は男子9〜13歳、女子11〜14歳に高値となり、やせの頻度は男子15〜17歳、女子12〜14歳に高値となった。

  前回調査と同様に高校生男子の高血圧の頻度が高値であり、5%となったほか、肥満群では小1〜3年ですでに血圧の上昇が認められている。

  また、正常体重児の中でも肥満度+15%以上はそれ以外と比較して小4〜6年と中学生の血圧が高く、動脈硬化指数が高く、HDLコレステロールが低値であったことから、「小太り程度でもリスクファクターがあり、食育が重要になってくるのではないか」と花木啓一委員(鳥取大学医学部教授)から報告された。

女子児童・生徒の睡眠不足が顕著

  ライフスタイルに関しては、小中高通じて女子が男子よりも睡眠不足を感じている割合が高い。小学生は「家族みんなの寝る時間が遅いので寝るのが遅い」という理由が多く、家族との過ごし方が就寝に影響している。

  中学生以降は勉強や宿題、帰宅時間が遅いことが影響しているが、前回調査と比較すると「インターネットやメールをしている」という回答が女子に多く、増加傾向にある。

  睡眠不足・肥満は朝食の摂取状況とも関連しており、小5・6女子を除き、朝食を「ほとんど食べない」と回答した人の方が「毎日食べる」と回答した人よりも就寝時間が遅い。

  また、朝食を「食べない日の方が多い」「ほとんど食べない」と答えた人が女子の肥満体型で多く見られるが、小5・6年生の女子のやせ体型でも「ほとんど食べない」と回答した人が多かった。

  井上文夫委員(京都教育大学教育学部教授)は、「肥満だけでなく痩せへの介入も必要になってくるのではないか」と話す。

健康教育推進学校 最優秀校は6校

  平成25年度の健康教育推進学校・最優秀校は、川口市立柳崎小学校(埼玉県)など6校が受賞。受賞者を代表して、最優秀校を受賞した愛知県立半田養護学校の青木廣康校長は「このたびの受賞は、将来の生活自立に向け、健康・運動・安全に取り組んできた成果で、学校全体で取り組んだ結果です。子どもたち、教職員に大きな励みとなります。より一層健康教育に精進したい」とあいさつ。

健康教育推進学校の実践

学校・家庭・地域と連携

 日本学校保健会が実施する「健康教育推進学校」の表彰事業は、学校における健康問題を中心として健康教育の推進に積極的に取り組み、成果を上げている学校を表彰するもの。今回は6校が最優秀賞を受賞。

◇     ◇

【羽生市立新郷第一小学校】
年2回の歯科健康診断、月1回の全学年歯みがきチェック、6年生親子によるRDテストの実施などを基に、一人ひとりの歯・口の健康状態の把握に努める。長年の歯科保健活動の積み重ねにより、DMF保有数0・04を維持。地域学校保健委員会を充実させ、児童主体の健康教育活動をさらに推進していく。

【西尾市立一色南部小学校】
開校以来続く伝統の「業前マラソン」を柱に、健康教育を推進。継続したマラソン活動を行う一方で、体力テストの「運動能力のバランスが良くない」という結果がある。それを踏まえ、体育や遊びを通して運動能力を育成しようと、外部講師による実技研修、児童会中心の大縄跳び大会等を企画している。

【川口市立柳崎小学校】
地域人材等の積極的活用が行われており、年3回の学校保健委員会、年5回の安全対策会議を中心に家庭・地域との連携を図り、町会の防災訓練へと参加するなど地域と積極的に関わる。また、体力向上の取り組みとして、業間運動や体育朝会等を実施し「運動が好きな児童100%」「新体力テスト総合評価A+B+Cが85%」をめざし、今年度89・9%を達成した。

【美里町立砥用中学校】
社会に出て通用する力を身に付けた生徒の育成に努めている。朝には、全員が健康観察カードに体と心の状況を記入し、自己評価がマイナスであった生徒については、学年主任、管理職も情報を共有し、それを活かした相談活動を行っていく。本格的に健康教育に取り組んでからは、学力や対外的な競技力の面で成果が上がっているが、「社会に出て通用する力」はまだ発展途上だとする。

【熊本県立大津高校】
生徒から「教室が汚い」「きれいにしたい」という声があがり、学習環境整備プラン「SSK‐P(Study Space Keeper‐Plan)」に6年間取り組んできた。教科書類の持ち帰りを防ぐため、各教科の協力を得て「ロッカーに置いてよいもの一覧表」を作成。生徒保健委員会はトイレ用品補充のデリバリーサービスなどを、美化委員会はゴミ回収を行うなど、生徒がピア・リーダーとして活躍。学習環境を整えることで学習時間も増加し、進学状況も上向きだという。

【愛知県立半田養護学校】
健康で丈夫な体づくりと体力の向上を目指している。保健指導の中で中心となる手洗いの取り組みは、実験や手遊び歌などを取り入れ、小学部、中学部、高等部と発達段階に合わせて指導し、委員会活動では自分たちが自作の音楽やポスターを作成。全職員へもこまめに情報提供を行ってきたことで共通理解が得られた。また、日常的に学活の中に清掃を取り入れているが、これは卒業後に清掃の仕事に就くケースが増加したこともあるためだという。

【2014年3月17日号】

<<健康・環境号一覧へ戻る