中川氏(左)と前川氏(右)の |
日本では、現在2人に1人ががんに罹患している。一方、欧米のがん患者は減少。これは欧米では初等教育の中でがんに関する教育が行われていることに起因する。このような状況を受け、日本でも平成26年度の文部科学省概算要求では、「がんの教育総合支援事業」が2500万円で盛り込まれた。また、昨年6月には第2期の「がん対策推進基本計画」が閣議決定し、がん教育が記載された。
バイエル薬品が がん教育を実施
この動きに先駆けて、バイエル薬品(株)は平成23年より、病気の予防と治療の啓発を通じ、生きることの意義を深めてもらうための特別授業「生きるの教室/ドクター中川のがんと向き合う」を、全国9か所の中学校で実施。9月9日には、受講した1106名のアンケート結果が発表された。
「生きるの教室」の講師を務める東京大学医学部附属病院放射線科准教授・緩和ケア診療部長の中川恵一氏は、「日本人はがんの治療として、手術以外の選択を知らない人が多い。日本は世界一のがん大国である一方で、がん対策後進国」と、講師を引き受けた。
授業への考慮は3点
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授業を実施した上で考慮したことは3つ。まず、家族や生徒自身ががんサバイバー(闘病中、経験者)であるケースを想定した「心のケア」、次に「いのち」の大切さを学んでもらう、そして「意見創発型」の授業であること。いのちの大切さ、がんについて予防や治療を学び、さらに自分のこととして捉える対話型の授業を実施してきた。
アンケート調査は、受講前・後、6か月後で実施。「がんを考えることについて」は、受講前49・4%が「考えてみたことがある」と答え、受講後は「考えていこうと思う」が96・0%に増加。さらに6か月後でも88・1%の生徒が「考えていこうと思う」と回答。
生徒の2人に1人は 家族と「話した」
また、この授業が「がんについて家族で話題にするきっかけ」となっており、受講後は86・%が「話してみようと思う」と回答しており(受講前「話したことがある」39・4%)、6か月後「話をした」という生徒は49・9%で、2人に1人は家族でがんについて話したという。
がんサバイバーの話を聞くことも重要だ。山口県周南市立須々万中学校で授業をした際、体験談を話した前川育氏(NPO法人周南いのちを考える会代表)は、白血病で息子を、胃がんで父を亡くし、自身も3度のがんを経験している。「生徒から意見がどんどんあがり、生徒はがんに対して肯定的な感想を述べてくれました」。
中川氏は「今後国をあげて保健体育、総合的な学習の時間、道徳などで授業が行われると思いますが、全中学生にがんサバイバーの話を聞いてほしい」と今後のがん教育に期待している。
【2013年9月16日号】