日本PTA全国協議会 |
この春、日本PTA全国協議会(以下=日P)は一般社団法人から公益社団法人となった。そして、新たな役員と共に、新しいPTA活動が始まろうとしている。公益社団法人となって初めての全国研究大会(第61回日本PTA全国研究大会みえ大会)を前に、今年6月より新会長に就任した尾上浩一会長(兵庫県PTA協議会会長)の決意を聞いた。
‐尾上会長は公益法人準備委員として、公益法人格取得手続きを進めていたわけですが、公益社団法人となって何が変わるのでしょうか。
公益法人の制度改革の中で、日Pはどうなるのがいちばんふさわしいのかということを考え、議論を行ってきました。また、文部科学省にもご相談し、その結果社会的な責任を果たしていくためには、公益法人格を取得すべきだという結論にたどりついたのです。
公益社団法人は公益事業を行うことが目的で、収益を上げることを考える必要はありません。まずは、しっかりと子どもたちのためにやるべきことをやっていくことが大事です。そして、理事は公益社団法人としての責任を意識し、責務を果たさねばなりません。新会長としてそうした意識付けや組織づくりを進め、約1000万人の会員のいる組織の理事として子どもたちの未来を背負っているという、責任の重さを再度認識してほしいと思っています。
‐公益社団法人になったことのメリットは。
公益社団法人になるということは、社会的な責任が大きくなるということで、すぐに何か目に見える形でメリットがあるわけではありません。まずは、従来から行ってきた日Pの活動をスケールアップすることが目標です。子どもたちのための活動を充実させることで、PTAの存在意義を会員も理解してくれるはずです。そして、会員にはこうした方針をゆるやかに説明していきます。
その最初の機会が「第61回日本PTA全国研究大会みえ大会」です。広報紙やHP等ではなく、直接会員に話をすることから説明をスタートします。組織の目的を共有することで、日Pの活動は熱くなります。保護者、子どもの意見の代弁者として、議論していきます。
‐尾上会長は単位PTA時代に苦労されたご経験があるそうですね。
初めて小学校のPTAの会長を引き受けることが決まり、前年の11月頃から学校の情報を集め始めたところ、学校が大変な状態になっているようだということが分かってきました。子どもが教室から出て行ってしまう、いわゆる学級崩壊が日常の光景になっていたのです。しかしそうした情報は、保護者の間ではほとんど共有されていませんでした。
ある頃より、毎朝校門に立ち子どもたちにあいさつをすることを始めました。それから校舎に入り、教室から逃げ出す子どもを見つけては教室に戻すということを、PTA役員数名で一緒に活動しました。毎日子どもたちを追いかけていて気付いたことは、子どもたちは「構ってほしい」と思っているということでした。
また、教育委員会にも出向き、保護者が応援するので教育委員会も学校改革に腰を据えて取り組んでほしいとお願いしました。教育委員会、学校、保護者の協力体制を築き、さらに指導力のある管理職、教員を配置してもらい、数年かかって学校はとても落ち着きました。
‐日Pは子どもとメディアに関する意識調査の中で、携帯電話やスマホを利用する中での問題についても調査していますが、今後どのように対応していきますか。
日Pはこれまで、携帯電話は適切な年齢になるまで「持たせない」というスタンスでしたが、今や生活に密着したツールとなり、「持たせない」だけでは不十分な対応になっています。これからは、いずれかの時期に「持つこと」を前提とした教育を行うことや議論を行い、新たな方向性のもと活動を進めていきます。
機器やアプリの機能について、子どもたちの方が保護者よりもよく知っています。そして、サービスの提供業者が作った仕掛けのなかに、子どもは仕組みを理解せずに興味本位で入っていく状況があります。ですから、保護者も子どもも両方に対して教育をする必要があります。
‐いじめや体罰については、どのように取り組んでいきますか。
親とのつながりがしっかりしていないと、いじめに遭っても、その情報が回りません。学校が問題を抱えていても、その事実が保護者に伝わらず、問題が矮小化されてしまうことがあります。学校と家庭が連携することで、問題解決のためにできることはたくさんあります。
体罰については、保護者が容認してきた部分も少なからずあったと感じています。しかし、大阪の事件を契機に、「体罰は絶対に許されない」ということが再確認されましたので、私たち保護者もきちんと認識を改めなくてはいけません。
‐日Pでは、東日本大震災の被災児童生徒のために「心のきずな61キャンペーン」を行ってきました。
震災で保護者を亡くした子どもたちへ、公益信託基金「東日本大震災日本PTA教育援助基金」を設立し、就学助成等を行うという目的で、募金をお願いして参りました。しかし、集まった募金は目標額にとても及ばない状況であります。
そこで、苦渋の決断ですが基金の設立は断念し、これまでお寄せ頂いた募金は被災児童生徒に対して今年度中に一括で給付する手続きを進めています。現在、全国で給付の対象となる児童生徒の把握を行っているところです。
基金設立という目標は達成できませんでしたが、この点は反省し、今後は迅速に対応できる体制づくりを整えたいと考えております。
【2013年8月19日号】