今年5月から始まった「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」(座長:福岡女学院看護大学・西間三馨学長/以下:アレルギー調査研究協力者会議)の中間まとめが、文部科学省から発表された。これにより、再発防止に向けた具体的取り組みとして、「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が十分に活用しきれていない現状を踏まえ、このガイドラインについて全ての教職員への理解を促進するためのわかりやすい資料の作成、さらには新しい医学的知見などを取り入れたガイドラインそのものの改訂が必要とされた。
個々の責任ではなく 組織として対応を
中間まとめは、7月29日に行われた「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」で討議されたもの。今後の食物アレルギー対応における基本的考え方としては、
●食物アレルギーの児童生徒が他の児童生徒と同じように給食を楽しめることを目指すことが重要であり、各学校、各調理場の能力や環境に応じて食物アレルギーの児童生徒の視点に立ったアレルギー対応給食を提供することを目指す
●東京・調布市のアナフィラキシーショックによる児童の死亡事故を契機に各学校現場での食物アレルギー対応がより前進するよう議論を進めていく
●医学的根拠に基づかない必要以上の対応や複雑な対応は、危機管理上望ましくないことを認識し、適切な対応を促すことが重要
●個々の教職員の責任を求めるのではなく、組織として対応していくことが重要
の4つの観点が盛り込まれた。
再発防止に向けた具体的取り組みとしては、まず「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」の活用の徹底が重要となる。また、ガイドラインに基づいた個々の学校の状況に見合ったマニュアル作りの促進、全ての教職員への理解を促進するために分かりやすくまとめた資料の作成、現行のガイドラインの作成から5年以上が経過しているため、新しい医学的知見などを加えた改訂版の作成を次年度行う方向だ。
対応の判断は管理職
また、校長等管理職の他、一般教員、栄養教諭、養護教諭、調理員など職種に応じた研修が重要事項であることも中間まとめの議論となった。特に、食物アレルギー対応を学校として判断する校長等管理職の研修は重要。その際、専門家による研修が望まれるが、地域によっては専門家が不足しているという指摘もある。
同会議では、それを踏まえ専門家が少ない地域においては、DVDや同一資料の使用など、継続的な研修を行うための有効な方法を最終報告へ向けて考えていく。
中間まとめの会議では、教育現場で働く委員や保護者代表から、学校給食のアレルギー対応については、調理場の増改築など「教育長の理解が重要」という声が多数あがった。
同会議は、今後関係団体等からのヒアリングや8月以降に調査される「学校給食における食物アレルギーを有する児童生徒への対応調査」等の結果を参考にしつつさらなる議論が行われ、本年度中に最終報告が取りまとめられる予定だ。
【2013年8月19日号】