学校・家庭・地域の「コーディネーター」に
全国養護教諭連絡協議会 濁川 こず枝会長 |
6月15日に開かれた全国養護教諭連絡協議会(以下=全養連)の平成25年度総会において、濁川こず枝氏(群馬県桐生市立川内中学校)が会長に承認された。新体制になった全養連の方針や今日の学校現場において養護教諭に求められる資質や果たすべき役割などについて、新会長に聞いた。
新体制の取り組み
基本的には前体制からの方針を引き継いでいきますが、児童生徒を取り巻く様々な健康課題に対して、養護教諭が専門性を発揮し、中核的な役割を果たせるよう、各研究会とともに取り組んで参ります。「専門性」については、その捉え方を突き詰めて考えていきたいと思いますが、養護教諭各自が専門性を確立できれば、自信を持って仕事にむかえると思っています。
子どもを取り巻く健康課題は日々変化しています。最近では慢性疾患のアレルギーなどが問題となっており、それによる死亡事故も発生しています。学校で児童生徒の命に関わる事態が発生した場合、養護教諭として正しい対応が取れるか、危機管理体制が整っているかが問われています。
東日本大震災後の心のケアは、被災地はもちろんのこと、直接被害のなかった地域の児童生徒も影響を受けていると思われるので心のケアが求められます。また、震災と関係なく心のケアを要する子どもも増えており、そのあたりが喫緊の課題と言えます。
また、全養連は文部科学省に養護教諭の複数配置を要求していますが、これを始め、自治体によって研修日数が異なるなど、一般教員と比べ法的に認められていない部分も多く、他教員と変わらない教育職だと認めてもらうための方策も話し合っていきます。
さらに、全養連が毎年実施している調査研究活動(保健室来室数やその理由、児童虐待、いじめなどの調査)のWEB化に向けて準備を進めています。6000人以上の会員に入力してもらうので、時間をかけてシステムを構築し、来年から実施する予定です。
求められる資質・役割
養護教諭には、人を見る時に1点だけではなく、トータルでその人を見られるように心がけることが求められています。例えば、子どもがケガをして保健室に来た際、その背景に何があるのか思い描きながら会話をしないと、大事なことを見逃す恐れがあります。言葉の裏側にあるものを感じ取る力が必要です。
平成21年に学校保健安全法が改正され、養護教諭にはコーディネーターとしての役割が重視されるようになりました。それまでの養護教諭の活動が認められてのことだと思いますが、今後はさらにそれに応えていく必要があります。
全養連では、夏の研修会で誰にでも見える保健室経営の在り方や専門性を高めるための専門医の講義、心のケアに関する講義などを実施し、養護教諭の資質を高めていきます。隔年で発行している研究誌『瑞星』では、すぐに使える実践例として全国の優れた取り組みを紹介しています。
震災と養護教諭
震災直後に宮城県の村井嘉浩知事が「いま必要なのは養護教諭だ」と全国の知事会で申し入れ、養護教諭の派遣が決まりました。養護教諭の価値を理解していただいたおかげで、宮城県には多くの養護教諭が派遣され被災地の支援にあたることができました。
今年2月に開催した「研究協議会」では、被災地で学校を支えた3名の養護教諭にお話しいただきましたが、「養護教諭が地域の中で頼られる存在」になったと聞きました。現在もスクールカウンセラーが子どもの心のケアにあたっていますが、養護教諭がコーディネーターとしての役割を果たすことで円滑なケアにつながると考えます。
新会長としての抱負
会員一人ひとりに、活動が伝わっていない部分もあります。「活動が見えてこない」など、思うように意見を言えない会員もいるはずです。私も、県の役員を務めるようになって初めて全養連の活動が分かるようになりました。全会員が、自分は全養連に所属していると意識するような会にしていきたいです。
それと同時に、一人でも多くの会員の声に耳を傾けていきたいです。4月にHPをリニューアルしましたので、さらなる情報発信、また各研究会の活動内容や会議の決定事項等も各都道府県の会長に随時伝えていきたいと思います。