熱中症から子どもたちを守る

 今年は、中国・近畿・東海・関東甲信地方の梅雨入りが例年より10日以上早く、平年並みの梅雨明けであれば、2か月近く梅雨が続く地方も出てくる。湿度の高い梅雨の季節から梅雨明けに気温が上昇する7月末以降から9月にかけて、学校現場では特に、体育・校外活動・部活動等での「熱中症」の対策が大切になってくる。関連省庁や団体等はHPで日々の気温などの情報を提供し、対策を呼び掛けている。

熱中症対策には5―15℃を推奨

  消防庁の発表によると、平成24年夏期(7〜9月)の熱中症による救急搬送総数は4万3864人。そのうち初診時における傷病程度では73人が死亡となっており、中等症以上も1万5188人と搬送された総数の約3分の1の人が、中等症以上の症状であったことがわかる。

熱中症の救急搬送 少年は増加傾向に

  年齢区分では、熱中症による救急搬送総数のうち高齢者は45・2%(1万9848人)と圧倒的な数だが、少年が6121人で14・0%となっている。

  全体の総数で比較すると高齢者の救急搬送が少しずつ減っているものの、少年は増加傾向にあるようだ。平成22年が5万3843人救急搬送されていたのに対し、23年、24年は減少している。少年だけで見ると22年が11・2%であったのに対し、23、24年は14%程度と約3ポイント上昇。

  平成23年の6月中の熱中症による救急搬送は7、8月に次ぐ多さとなっている。

  熱中症と水分補給は切り離せないものだが、文教大学健康栄養学部講師の目加田優子氏(食品栄養学博士、管理栄養士)によると、子どもは発汗機能が未熟で、体温調節の手助けを必要としているという。

  そのため、冷えた水分は体への吸収率が高く、深部体温を下げることができるため、屋外での活動時は、冷えた水分を摂取することが大切。目加田氏は、熱中症対策という視点では、5〜15℃の水分を補給することを推奨している。

環境省は暑さ指数 予測値をメール配信

  そんな中、各省庁も国民への情報提供を強化。

  環境省では5月13日から10月18日まで熱中症予防情報サイトで、情報を提供する。アドレスは今年度から変更されている。また、要望を受けて、6月1日より暑さ指数予測値のメール配信を開始した(配信は民間のメール配信サービス)。

  さらに、「熱中症環境保健マニュアル」、「熱中症〜ご存じですか?予防・対処法〜」、「環境省熱中症情報」といった印刷物を、先着順にて無料配布(郵送代は別途必要)。学校でも大いに活用できるだろう。

  気象庁は、5月29日より翌日、または当日の最高気温がおおむね35℃以上になることが予想される場合に、数日前から「高温に関する気象情報」を発表する。それとあわせ、気象庁HPに主な地点の気温予測グラフを掲載し、熱中症への注意を喚起する。

環境省 熱中症予防情報サイト
●全国841地点(昨年約150地点)の暑さ指数の予測値及び実況値
●住宅街やアスファルトの上等の実生活の場、身長の低い児童を想定した暑さ指数参考値の提供
●HTTP方式による数値データ提供
●個人向けメール配信サービス(無料)など、各種熱中症予防情報コンテンツの追加
PC=http://www.wbgt.env.go.jp/
携帯電話=http://www.wbgt.env.go.jp/kt/

気象庁 熱中症予防サイト
●高温注意情報=翌日または当日の最高気温が概ね35℃(※)以上になることが予想される場合に喚起(※は一部地域除く、以下同)
●高温に関する気象情報=向こう1週間で最高気温が概ね35℃(※)以上になることが予想される場合に数日前から発表
●高温に関する異常天候早期警戒情報
=5日〜14日後を対象として、「高温に関する異常天候早期警戒情報」(7日間平均気温に基づく)において、7日平均気温が概ね28℃(※)を超える確率が30%以上と予想される場合に喚起
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/netsu.html

 

水分補給の正しい知識を教育現場での熱中症対策―Save Our Kids

Save Our Kids

養護教諭をはじめ約70名の教育関係者が参加

  子どもを熱中症から守るための啓発活動を続ける(一社)Save Our Kidsは、教職員を対象とした「教育現場での熱中症対策セミナー」を、5月19日に横浜市内で開催。養護教諭をはじめ教育関係者が約70名参加し、熱中症に関する正しい知識を身に付けてもらうため大学教授による講演が行われた。また熱中症への注意を促すポスターなども配布。

 

 

 

体温上昇による発汗が熱中症の引き金に

Save Our Kids

滋賀大・寄本明教授

  滋賀県立大学大学院の寄本明教授は「熱中症発生の現状と学校管理下における予防」について講演。近年、熱中症による死亡事故が急増しているが、その原因には日本の平均気温が高まっていることが背景にある。

  「高温や運動により、体温が上昇すると、人の体は汗をかいて体温を下げようとしますが、発汗により体内の水分と塩分が欠乏することで、体内の調整機能が破たんして熱中症となります」。

  学校での熱中症死亡事故の発生時期は、夏休み期間中である7月下旬から8月上旬がピークだが、急に暑くなる6月や残暑が厳しい9月でも発生するので、運動会を暑い時期に行わないなどの対応が求められる。

  熱中症への注意点としては、「たくさん汗をかいた時は、水分と塩分を適度にとって休憩する」、「体温調節機能が未発達や低下している、子どもやお年寄りは特に気を付ける」ことなどを寄本氏は挙げている。

経口補水液により 水分と塩分を補給

Save Our Kids

神奈川県立保健福祉大
谷口英喜教授

  神奈川県立保健福祉大学福祉学部栄養学科の谷口英喜教授は、熱中症になった場合の正しい処置の仕方について紹介。涼しいところに移動させて冷やす、という体の外側からの処置と同時に、水と塩分を補給させるなど体の内側からの処置が大事と説く。

  熱中症は脱水から体温上昇が起こって発生するものだが、適切な補水方法として電解質と糖質がバランス良く配合された薬局などで売られている経口補水液を飲むことを谷口氏は勧めている。

  「熱中症対策として水やお茶をガブ飲みする人がいますが、水分ばかり摂取して血液の濃度が薄まると、人間の体は余分な水分を排出しようと大量の汗を出すので二次脱水の危険があります。水と電解質を補うことで初めて補水できます」

  熱中症の症状が見られたら、なるべく早く経口補水液を飲ませることが大切で、小中学生の場合は、まずは500ミリリットルの摂取が目安。その後回復しても、その日は無理をさせずに休息させるように注意を促した。

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  なお、このセミナーは兵庫・滋賀・神奈川の3か所で行われた。

【2013年6月17日号】

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