学校における健康問題を中心として、健康教育の推進に積極的に取り組み、成果を挙げている学校を表彰し、学校保健の充実に寄与することを目的に(公財)日本学校保健会が行っている、「21世紀・新しい時代の健康教育推進学校」表彰事業。2月21日、その表彰式と最優秀校7校の実践発表会、被災地支援事業の学校報告、同会の事業報告会が都内の日本医師会館で行われた。
日本医師会館で表彰式が行われた |
健康教育推進学校表彰は、長崎県・雲仙市立神代小学校、埼玉県・上尾市立今泉小学校、埼玉県・春日部市立上沖小学校、和歌山県立桐蔭中学校、岩手県立福岡高等学校、東京都立羽村特別支援学校、横浜市立日野中央高等特別支援学校の7校が最優秀賞に決定。この7校及び優秀校9校が、表彰式に参加した。
開会に先立ち同会の横倉義武会長は、「いずれの学校も家庭・地域と一体となり、すばらしい健康教育を実践し、特色ある健康教育に取り組まれました。受賞校はモデル校として引き続き健康教育の充実と発展に努めてください」とあいさつ。
受賞校を代表して岩手県立福岡高等学校の佐々木龍孝校長は、「児童生徒の健やかな成長を願い、健康教育推進に学校をあげて取り組みました。教職員はもとより、子どもたちの主体的な関わりが大切です。これを励みにさらに健康教育に取り組んでいきます」と述べた。
最優秀校各校の取り組みが発表された後、日本学校保健会「平成24年度 被災地支援事業」の対象校2校から、被災に関わる学校の事業について、「共に育む健やかな子ども」をテーマに、報告がなされた。
SCと共に生徒の心のケアを継続
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宮城県気仙沼市立鹿折中学校からは、鈴木真弓養護教諭が報告。同校では、校区周辺に12メートルを越す津波が押し寄せ、さらに、流された重油に引火して火災が起こり、甚大な被害を受けた。
住民は小高い場所にある学校へ避難して来たが、津波に飲み込まれ泥まみれやずぶ濡れになった人が多く、100名くらいいた生徒は避難者の手助けをした。
その後、保健室は診療室となったが、学校再開に伴い「安心して学校生活を送れるように、今までどおりの生活に戻したい」と、新しい保健室を作った。
震災後は、心と体の変化が現れ、突然泣いたり、不眠、親の失業などによる2次的ストレス、肥満の増加などが見られた。心のケアについては学校全体で共通理解を図り、緊急派遣された他県のスクールカウンセラーと連携、体を使ったリラクセーション授業を続け、生徒の心が少しずつ動いてきたという。
アナログな紙資料が被災後に役立つ
また、岩手県立宮古高等学校の片座麻妃養護教諭は、震災当時、出身地にある岩泉高校田野畑校に勤務していたが、その後すぐに盛岡北高校へ、そして平成24年度には宮古高校へ赴任。激動の2年間を送った。
現任校では、線路の被災による代行バスの通学で、登校時に体調不良を訴える生徒もいる。ゴミの散乱や私語なども目立ち、保健室やカウンセリングの利用も多いという。
震災に関する相談は少ないが、相談の背景に震災が影響していることもある。普段は見えなくても、大きな余震が起こると泣いたり叫んだりという状況が見られ、片座養護教諭は、心の深い部分に震災の恐怖があることを改めて認識。
震災を振り返り、「インターネットや携帯電話といった情報が遮断され、アナログな紙の資料が大切だということを感じました。実践などの資料は大変役に立ちました」と話した。
【2013年3月18日号】