健康教育で大切なこと<前編>

実態に合わせ児童生徒の主体的な参加を

竹下君枝主幹教諭

「学校保健」文部科学大臣賞を受賞
東京都立新宿山吹高等学校
竹下君枝主幹教諭

 11月8日・9日に熊本市で開催された全国学校保健研究大会では、文部科学大臣表彰が行われた。そこでは学校医、学校歯科医、学校薬剤師、校長、養護教諭の個人127人、学校20校が学校保健に対する功績を称えられ表彰された。その一人、東京都立新宿山吹高等学校(飯山昌幸校長)の養護教諭・竹下君枝さん(主幹教諭)にこれまでの健康教育活動とこれらからの自分、後進への思いを聞いた。

◇       ◇

  新宿山吹高校に赴任して今年で4年。10月30日に、8人の専門家を呼んだ「健康講話」を無事に成功させた。「以前はこの健康講話を、毎年1つのテーマで複数の講座を設定していたようですが、今は、事前に生徒の希望調査を行い、生徒の実態に合わせて8つのテーマを企画して、生徒が選んで主体的に参加しています」。

前任校での経験生かし 健康講話を年1回開催

  竹下養護教諭は、前任校の都立九段高校時代に、「健康教育週間」と題し、生徒によるプロジェクトチームを発足させ、保護者も交えて学校をあげた健康教育に取り組んできた。新宿山吹高校では、この経験を生かし「健康講話」として続けている。
だが、一つだけ違うことがある。同校は単位制・無学年制でクラスがない。そのため、大掛かりな「健康講話」として取り組むことはできないが、だからこそ生徒の心身の実態を上手に把握しなければならない。「何よりも大事なのは、教員の思いや思い込みで行うのではなく、生徒が主体的に参加するという仕組みです」。

竹下君枝主幹教諭

10月30日に行われた「健康講話」
は、8テーマで実施

  同校では、入学前に保健調査を行い養護教諭と面談が行われている。クラスがないということは、裏を返せば「クラス」という枠組みに馴染めないため、この学校を選んだ生徒もいるということ。「この面談システムができていたのは、とても有難いことでした」。

2校目での反省は 管理職への報告不足

  養護教諭になって最初に赴任した学校では、何をしたらいいのだろう、と思いながら日々を過ごしていた。2校目では、たばこや性などありとあらゆる問題が目の前に立ちはだかり、それらに対応してきた。

  そこでわかったことは、例えば性に関する指導は、保健体育の教員以外にも、生物の教員とTTで授業ができること。「後で知ったのですが、ドイツでは生物の教員が性教育を行っています」。授業の方向としては間違っていなかったが、ここで反省点が出てきた。「生徒を強制的に参加させたことと、管理職への報告不足です」。

子どもたちのために 自分の経験を伝える

 この2校目にいた頃、原稿依頼を受けたが、何度も断り続けてきたという。「書くことが苦手だったから」だと笑う。

  だが、指導主事をしていた友人に諭される。健康教育に関した講演会を実施するにしても、人選、依頼、時間、予算、校内では誰と折衝したらよいのかなど、たった1回の企画を行うことがいかに大変か。養護教諭であれば誰もが思うことだろう。
「何かを始める時大変だったでしょう。全国の養護教諭が苦労している。子どもたちのために書いてみたら」。その言葉が竹下養護教諭の心に響いた。「子どもたちのために、と言われたら書かずにはいられませんよね」。

(2月18日号後編に続く)

【2012年12月17日号】

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