日本人の2人に1人が一生に一度はがんになり、3人に1人ががんで死亡する一方で、がんに関する知識は希薄である。そんななか、バイエル薬品(株)は昨年より子どもたちに「生きるの教室‐ドクター中川のがんと向き合う」を実施し、がんへ対する知識の向上を促している。6月15日には東京都葛飾区立堀切中学校(永林基伸校長)の2年生に授業を行った。
生徒から中川氏(中央)と天野氏(右) |
「生きるの教室」の講師を務めるのは、がん教育に先駆的に取り組む、東京大学医学部附属病院放射線科准教授で緩和ケア診療部長の中川恵一氏。同校では道徳でいのちの大切さについて学習しているが、「いのちに関わる人に話を聞いてみる」経験を積んでほしいと授業を実施した。
授業は、まず「生きる」と「がん」と向き合うためのムービーを全員で視聴。要所で映像を止めながら、食事や喫煙などの生活習慣が大きな原因であること、日本のがん検診は先進国の中で非常に低いこと、大人になるとがん細胞は毎日増えていることなどを中川氏が説明していく。
そして、悪性リンパ腫を発症し治療の経験がある、特定非営利活動法人グループ・ネクサス理事長を務める天野慎介氏が自分の経験を語る。
「27歳の時に発症し、5年後の生存率は50%と言われました。がんになってわかったことは"普通の人生"はあくまで"未来予想図"でしかなく、人は一人では生きていけないということでした」との言葉に、生徒は熱心に聞き入る。
想起・喪失・希望の3ステップで学習
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その後、一人ひとりが自分の大切な人の好きなところや良いところを紙に書き、さらにその紙に大きくバツ(×)を書いて裏返し、もしその人ががんになっていなくなったらどう思うか目を閉じて考え、がんで亡くならないために自分たちは何ができるかを考え、グループで討議しあう。
この一連の作業は「想起」「喪失の体験」「希望」の3ステップを体験してもらい、「がんとの向き合い方」を考え「がん」を「自分ごと化」してもらうことが目的だ。
生徒からは「たばこを取り上げる」「検診を無料に」「医者になる」「生きるの教室について話す」などの意見に続き、今回の大きな目的である「がんの話を家族でする」という意見もあがった。
自分の大切な人のために何ができるかを心に留めながら授業を聞いていた生徒に、永林校長は「自分たちを大切にすることが周りを大切にすることにつながります」と伝え授業を締めくくった。
【2012年7月16日号】
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