6月16日、17日に横浜市で開催された「第7回食育推進全国大会」では、はまぎんホールで鼎談、パネルディスカッション、講演会などが多数行われ、食の大切さ、家庭での食育など様々なテーマの話題が飛び交い、多くの来場者でにぎわいをみせた。
震災を機に家族の単位を確認できた
話がはずむ服部氏、さかなクン、内田氏 |
16日の鼎談「食の大切さをあらためて考える」は、キャスターの内田恭子氏、東京海洋大学客員准教授のさかなクン、服部栄養専門学校校長の服部幸應氏が、それぞれの立場で感じてきた食の大切さが語られた。
服部氏は、1965年頃から日本人の食生活はバランスが良くなってきたが、1985年頃から過剰な食生活になってきたと指摘し、「"少し洋食くらいの時代"が理想でした」と振り返る。
また、過剰な食生活の一方で、日本人女性のヤセ願望も危惧しており、「妊娠しにくく、妊娠しても高血圧症になる方が増えています。子どもの頃からのバランス良い食生活が大切です」と話す。
話は東日本大震災の直後に及び、現地に8回炊き出しに訪れた服部氏は、「家族が肩を寄せ合ってごはんを食べました」と喜ぶ姿を見て、家庭という単位が確認できたようだと話す。
さかなクンは、震災後特別に海に潜らせてもらい、瓦礫のなかに鮑を見つけ「生きている」と感激した。「漁師さんの仕事を見て原点に返っています。一つひとつに命があり、届けてくれる人がいて、作ってくれる人がいることを実感しています」と食に携わる人々への感謝を述べた。
先駆性・市民力・農業力のある横浜
17日のパネルディスカッション「家庭で食育を楽しむために」には、タツヤ・カワゴエオーナーシェフの川越達也氏、(株)崎陽軒取締役の君塚義朗氏、横浜市PTA連絡協議会会長の長島由佳氏、横浜マリノス(株)ホームタウン・ふれあい本部ふれあい課課長の望月選氏、横浜副市長の鈴木隆氏が登壇した。
川越氏は、九州出身で山と海に囲まれ天然の食材がたくさんある中で育ち「母親の料理が味覚の原点だった」と話す。小学生の頃に、見よう見まねで母親のチャーハンの味に近づけたら友達が「おいしい」と喜んで食べてくれたことが、料理人の原点でもあったという。
|
1908年創業の老舗崎陽軒の君塚氏は、工場をリニューアルする際に見学路を作り、シュウマイを通して、甘い、しょっぱい、酸っぱい、辛い、旨味の秘密を子どもたちに教えているという。
また、横浜市では中学校で学校給食が出ないが、長島氏はそれについてアンケートをとると、親は90%以上が給食を希望している一方で、子どもたちは保護者の弁当を希望していることを紹介し「保護者のテーマは時間の使い方にあると思います」と述べた。
また、横浜マリノスは4年前から教育委員会の食育推進活動を応援し、選手らとサッカー教室で交流しながら食について語る場を設けている。「夢に向かって正しい食事を実践できるように協力したい」と子どもたちの夢を食で支えると望月氏は意気込む。
副市長の鈴木氏は、横浜市は食の先駆性があり、農業が盛ん、そして様々な団体が力を発揮し市民力があるという3つの強みがあると紹介。官民一体となって食育の連携を行っている様子が、垣間見られた。
【2012年7月16日号】
関連記事