来春で退職となる大阪府高槻市立城南中学校の前田勉校長(高槻市中学校長会会長)が、校長1年目から教職員に毎週発信し続けた「校長室通信」は、教職員間のコミュニケーションツールとなった。課題校を蘇らせた1年目の通信を連載中。
授業づくりのヒント【6月14日】
授業の充実を考えるとき、教師が生徒をどのような存在として捉えているかという「生徒観」も重要な要素の一つになります。「学力は今ひとつでたいしてあんまり知らない」「中学生といっても子どもだからそんなに深く考えることは出来ない」などという「生徒観」に立つと、どんな授業が展開されるでしょう。
あまり知らないんだから、物事を知っている教師が授業という名目の中で教え込もうとします。また、深く考えないのだから簡単な例示から複雑なものへと単純にステップアップしながら、単純に繰り返し教え込む事が有効だということになりかねません。
そして、長い時間集中できないのだから、強制的にこちらを向かすか、あるいは考えさせることを少なくして直球で教え込む事が効果的だと考えてしまうかもしれません。さらに、表現力が下手だと思っているのですから、励ましと強制の多い授業になっていくかもしれません。
これに比べて、「知的好奇心を持ち、自分なりの考えを十分持っている」「もともと表現力が豊かである」という「生徒観」に立てば、前述とは異なる授業になると思います。基本的には、生徒の知的好奇心を刺激し、生徒が自ら学びの対象に働きかけられる状況が設定されている授業です。こういう授業では生徒は主体的になりますし、主体的に関わったことについては豊かに表現できます。
授業を創るときは、生徒の「有能さ」を前提にして、その知的好奇心を刺激しながら、主体的に取り組める展開の工夫が必要だと思います。そうした工夫とは次のようなことが考えられます。●具体的な教材があること●教材に触れたり操作したりすることができること●教材は可能な限り豊富であること●生徒の日常生活に結びつくこと
何人かの授業に参加しましたが、とても楽しく知的好奇心を揺さぶり、豊かな表現力に出会えました。
(「学校経営の金言・迷言・独り言〜全てを生かす校長室通信」より抜粋/城南中=072・673・4491)
【2012年6月18日号】
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