被災地でも活躍 栄養を整える役目に
シンポジウム「いま一度、乳の価値を考える」<牛乳の日>

 今年設立された「乳の学術連合」は、(社)日本酪農乳業協会(J‐Milk)との共催で、6月1日の「牛乳の日」に合わせて、一般公開シンポジウム「いま一度、乳の価値を考える」を開催した。「乳の学術連合」は、牛乳乳製品や酪農乳業の持つ多様な価値を探求し啓発する組織として、健康科学・社会文化・食育(教育)といった分野の専門家による3分野で設立されたもの。「牛乳乳製品健康科学会議」「乳の社会文化ネットワーク」が既に立ち上がっており、7月に牛乳食育研究会が組織化される予定。

食育

各分野から「乳」について意見を述べる
パネリスト

 この日は、乳の社会文化ネットワーク代表幹事の和仁皓明氏(西日本食文化研究会主宰)が「食文化」について、名古屋大学大学院生命農学研究科教授の生源寺眞一氏が「経済」について、国立長寿医療研究センター臨床研究推進室部長の細井孝之氏が「健康」について、日本栄養士会会長の中村丁次氏が「栄養」について、それぞれの分野と「乳の価値」について発表後、パネルディスカッションを行った。

  「栄養補給と生活習慣病予防から見た牛乳の役割」について講演した中村丁次氏は、東日本大震災発生後の食事状況についてふれた。被災地では食料の問題はないとされていたが、食事調査を行ったところ、炭水化物ばかりを食べており、大いに問題があったという。「その時に、牛乳は栄養素のでこぼこを整えてくれました」と牛乳が活躍した場面を紹介。

  また、研究結果によると、乳製品の摂取量と血圧には負の相関関係があること、肥満の予防にも一役買っていることなどが検証されてきているという。

  第2部のパネルディスカッションでは、消費文化論の視点から家族の消費などをテーマに研究する法政大学経営学部教授の木村純子氏を進行役とし、1部で講演した和仁氏、生源寺氏、細井氏、中村氏の4人がパネリストとなり、「乳のルネサンス」をテーマに食文化・経済・健康・栄養の視点で意見交換がなされた。

  乳の社会文化ネットワーク代表幹事でもある和仁氏は、食文化の視点から、増える高齢者にどのように摂取してもらうか、そのためには日本の消費者像を見極める必要があることを指摘。

  経済の視点から生源寺氏は、日本は近い場所に酪農家がいるという恵まれた環境であり、知らないことは恥ずかしいことという意識で、酪農教育ファームなどを活用して早い段階で理解することが大切であると述べた。

  細井氏は、医師として健康の立場から、カルシウムを補給し骨粗しょう症予防になり、機能的物質がたくさん入っているが、新規性がなく調理法などに工夫が必要なのではないかと投げかけた。

 

【2012年6月18日号】

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