高性能PCや高度なクリエイティブツール等、DXハイスクールが求める環境といえる設備を既に実現している学校もある。東京都立三鷹中等教育学校では、全国に先駆けて「メディアラボ」を2021年度に設置。同校の生徒は授業のほか空き時間や放課後などに自由に使っている。同校の機器選定の視点は、DXハイスクール事業(申請要件3)の参考になるだろう。同校「メディアラボ」等の整備内容を「情報」担当である能城茂雄指導教諭に聞いた。
高性能PC8台はクリエイター向け(DAIV Z7/マウスコンピュータ)を整備。イラスト制作や高精細の写真編集、動画編集やCG制作等の用途を幅広くカバーした機種、かつプロのクリエイターやグラフィックデザインの専門学校にも導入実績があるものとし、メモリを32GBに増強。校内LANに高速アクセスするため10GbEネットワークカードを付属するなどのカスタマイズを行い、生徒の自由な創作活動を強力にサポートする構成とした。CPUは第10世代インテル®Core ™i7―10700Kプロセッサー。ストレージはNVMe対応の高速SSDを採用。
作業しやすさを考慮し、モニターは31・5型4K対応液晶ディスプレイを採用したiiyamaブランドを導入。4Kブルーレイや動画配信サービスで採用されている高画質化技術「HDR10」に対応している。フルHDの4倍の情報量を1画面に収めることができ、複数の素材やソフトウェアを起動しながらの編集作業もストレスなく進めることができる。
これらのスペックを活かすアプリケーションとして、Adobe Creative Cloudのアカウントも提供。「4K映像を編集・4Kモニターで再現」することを可能とした。アカウントは、当初は実証実験としてAdobeより無償提供。現在は保護者負担(670円/年)で全校生徒に配備している。
このほか「情報」の授業でプログラミング言語について生徒が自学できるように学習サイト「progate」も利用。中学高校向けの無料プランを利用し生徒用アカウントを用意(https://prog-8.com/plans/for_school)。プログラミング学習サイト「paizaラーニング」の学校フリーパスも提供している(https://paiza.jp/works/lp/free_pass)。
さらにこだわったのがクラウドモデルをローカルで検証できる環境だ。
設置予定の「情報Ⅱ」の演習において、生徒に「現実社会で稼働している情報システムの体験」を提供したいと考え、「外部からアクセスできない安全な内部ネットワーク」=仮想ネットワークを高校のPC教室内に構築するため、50TBのネットワークハードディスク=NAS(QNAP)を導入。PC教室のネットワークに複数台接続してバーチャルマシンを生徒用サーバとして設定した。「情報Ⅱ」を選択する生徒10~20人程度を想定し、現在5台のNASを準備済。SQL実習(データベース)のコマンド演習や、Webサイトの制作からアップロード・外部公開まで、実世界と同様のシステム開発を体験できる。
能城指導教諭は「メディアラボや仮想サーバ環境により、大人がビジネスの世界で使用する機材と変わらない環境・設備で活動することができ、生徒たちは自分の探究的な活動にそれらを利用して、様々な成果を出している。先日は『モバイルアプリコンテスト2023』で、高校生が審査員特別賞、中学生がネクストジェネレーション賞を受賞していた」と話した。(関連5面)
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教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年2月5日号掲載