暁星小学校 英語科主任
岡澤永一氏 |
外国語活動(以下、英語活動)において、担任は良質な英語でやりとりを進める、英語活用者としての見本であるべきです。また、学習途上にいる児童の英語の正誤を見極める評価者や、やりとりを正しい方向へと進める先導者の役割も担っています。担任によるこれらの児童支援を常時可能とするためには、担任を中心とした一斉指導が最も望ましい活動形態でしょう。
英語活動での一斉指導とは、児童全員の前で、担任と児童による一対一のやりとりが多く行われる形態を意味します。担任とやりとりを行う児童は、自身の返答への評価、修正を受け、それ以外の児童は、活動のねらいとなる表現を何度も聞き、頭の中でやりとりの練習を繰り返すのです。そのために担任は常にクラス全体を意識し、良質な英語で一人ひとりとやりとりを行わなければなりません。また、注意点や誤りの指摘は、全員がそれに耳を傾けているという意識をもって、その児童に正しい英語を返します。
一方、個別活動を英語活動の柱とし、児童の英語使用機会を確保すべし、という意見もあります。この考えを基に行われるのがペアワークやグループワークです。しかし、学習初期段階にいる彼らの英語力では、自分の気持ちを自由に表現するのは難しく、個別活動中は丸暗記しただけのセリフを発し、表現できない部分をいいかげんな英語や日本語で補ってしまいます。
この時期の児童に必要なのは、"英語っぽい"ことばを一方的にぶつけ合う相手ではありません。興味ある内容について、理解度に応じた英語で的確に彼らを導き、対話を継続してくれる相手なのです。児童から信頼され、彼らの流行や生活環境など様々な情報を把握する担任はその役として最適であり、さりげなく補助するだけで、児童は、「自分自身の英語力でやりとりを続けられた」と満足できます。
英語活動中の担任と児童の関係は、やりとりという名のロープの端をお互いに握り合っているようなものです。担任は全児童分のロープを持ち、ときにそのうちの一本を児童と引き合い、ときにすべてを引き寄せクラス全体に質問を投げかけます。担任がよかれと思ってロープをぐいぐいとたぐっても、児童が興味を失えば、彼らはためらうことなく手を放してしまいます。児童の心が動く内容で活動を進めることが、彼らの活動への集中を生み、英語力の蓄積につながるのです。
担任中心の英語活動には、多くの労力と責任が要求されます。しかし、あなたが費やした時間や手間は、必ず児童の英語力に比例します。英語活動を主導するのは、英語や機器を巧みに操る、形だけの先生ではありません。児童の活躍する未来を心から願い、そのスタート地点にいる彼らの力を信じ、育てる、あなたなのです。
【プロフィール】
岡澤永一氏:
暁星小学校英語科主任。外国語教育メディア学会関東支部早期外国語教育研究部会主任。第三回マルチメディア学習教材活用国際コンテストにて国内最優秀賞受賞。著書に『小学校英語 with 電子黒板』(ドリマジック社)がある。
(1)外国語活動、担任主導こそが理想
(2)外国語活動の成否握る英語の質
(3)良質な英語で進める外国語活動
(4)児童と担任とのやりとりを柱にした外国語活動
(5)積極的な日本語使用で進める外国語活動
(6)担任中心の外国語活動の実施
【2011年3月5日号】