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【沖縄修学旅行】現地視察研修会
環境・平和学習で日本の未来を考える

参加者の声 >>

本島・周辺離島(渡嘉敷島・座間味島)

沖縄修学旅行 日本で唯一の亜熱帯地域である沖縄県。その本島から西へ約40kmに点在する本島周辺離島「慶良間諸島」は、周辺海域がラムサール条約に指定され豊かな自然が残る。また、沖縄戦の際にアメリカ軍が最初に上陸した場所として本島とは異なった歴史学習も可能だ。「沖縄修学旅行現地視察研修会」では、本島と渡嘉敷島、本島と座間味・阿嘉島を組み合わせた2コースを視察した。(主催/沖縄県・(財)沖縄観光コンベンションビューロー、企画・協力/教育家庭新聞社)

渡嘉敷島 恒例の入村式で大歓迎 長年の実績で万全の受入

 昼頃に各地から参加者が那覇空港に到着し、昼食後に本島内を視察(左記参照)。その後、泊港より高速船「マリンライナーとかしき」で渡嘉敷島へ渡る。乗船時間は約35分で、大型の「フェリーけらま」でも約70分で到着する。

 
 
 
 
 
 
 

 途中、「鯨が右側にいます」との船長のアナウンスで右側を見ると、ザトウクジラがジャンプを見せ、島への期待が膨らむ。さらに港へ着くと「ようこそ渡嘉敷島へ」の横断幕を掲げた島民の盛大な歓迎が待っていた。約300人が集合できる屋根付きエントランスがあり、修学旅行では「入村式」として歓迎行事をいつも行う。

阿波連での分宿は “ふれあい”を重視

  島は、村役場や港がある玄関口「渡嘉敷」、港から車で10分のトカシクビーチがある「渡嘉志久」、同じく車で約15分の阿波連(あはれん)ビーチがある「阿波連」の3地区で構成。修学旅行は、渡嘉志久のホテルと阿波連地区内の15軒の民宿で分宿する。1軒の受入れは12〜51名と小規模。夕食後には各宿でネイチャー体験や沖縄料理体験を実施することもでき、アットホームなふれあいが特徴だ。

豊富なマリン体験 環境学習も兼ねて

  島の西海岸がラムサール条約に登録され(2005年11月)、美しいサンゴ礁が守られている。体験ダイビング、シュノーケル、シーカヤック、釣りなどのマリン体験や、ガラスボート、潜水タイプの水中遊覧船、リーフトレイル(磯観察)を通じて、自然と共生する島民の生活と環境について学習ができる。研修会では、水中遊覧船とリーフトレイルを体験。干潮のリーフに現れた小さなカニやヒトデ、熱帯魚などの姿に、一行も童心に返って観察していた。

  マリン体験以外には、沖縄料理体験を通じて文化を学ぶこともできる。研修会参加者は、サーターアンダーギー(沖縄風ドーナツ)とパパイヤ・イリチー(パパイヤと豚肉などを炒めたもの)作りに挑戦。出来たてのサーターアンダーギーは格別のおいしさだった。

本島と異なった 平和学習の地に

  ここ渡嘉敷島では、沖縄本島での修学旅行に取り入れられているものとは異なった平和学習がある。昭和20年3月末、アメリカ軍が沖縄本島に上陸する前に上陸したのが、渡嘉敷島を含めた慶良間諸島。言わば沖縄戦の始まりの地なのだ。国立沖縄青少年交流の家では、平和学習の講演を行うことが可能。

  「集団自決跡地」、「戦跡碑」「特攻艇秘匿壕」を、語り部・吉川嘉勝さんの説明で視察。

  島の北部に追い詰められた住民が自決した「集団自決跡地」では、自身が6歳で経験した辛い過去を語ってくれた。

  長年黙してきたが、真実を語りつなげなければならないと感じ、3年程前から説明役を始めた。修学旅行生への説明も相談に応じている。

  「戦跡碑」は、この地で戦闘が行われ多くの島民が亡くなったことを埋もれさせてはいけないと、作家・曾野綾子が建立。「特攻艇秘匿壕」は、日本軍が爆弾を積みベニヤ板で作った突撃用の小さな舟を隠す壕だ。

  渡嘉敷村では、修学旅行の受け入れは10年以上の実績があり(毎年20校程度)、受け入れ態勢や安全対策も整っている。

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別れを惜しんでエイサーを演舞する島民たち 集団自決跡地で自身が子どもの頃の経験を
話す語り部の吉川嘉勝さん
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サーター アンダーギー作りに挑戦する参加
者たち
民宿から近くマリンスポーツができる阿波蓮
ビーチ

 

本島/那覇 新サービス 街歩きの「那覇まちま〜い」

沖縄修学旅行
博物館の展示で沖縄全体を学ぶ
沖縄修学旅行
「壺屋のツボ やちむん通りとすーじぐゎー
(小道)めぐり」では立派な登り窯に驚く

 【沖縄県立博物館・美術館】渡嘉敷島、座間味島へ渡航する泊港より車で約5分、那覇空港からは約20分。沖縄の変化に富んだ歴史、文化、自然、芸術、民俗、交易などの展示が見られ、「海と島に生きてゆく」ことの意味を問いかけている。

沖縄修学旅行
「ペリー上陸の地 泊を歩く」コース
では街中に突如現れた拝所に沖縄
らしさを感じた

 館内はタッチパネルを多用し展示が分かりやすく、事前予約で館内の案内を依頼できる。また、HPから小・中・高それぞれに向けたワークシート「ウチナー探検 博物館学習ノート」をダウンロードでき、事前学習にも取り組める。ここで沖縄の全体像をつかんでから修学旅行に入ると、より学習が深まるだろう。

  【那覇まちま〜い】那覇市観光協会が昨年12月より始めた市内の案内

サービス。「まちま〜い」とは、沖縄の方言で「町を散策する」という意味。那覇の歴史や文化に詳しいガイドが、ガイドブックには載っていないディープな那覇の街を案内してくれる。

 1名のガイドで約5名から15名を対応し、修学旅行生には時間等に応じて既存のコースをアレンジ。本研修会では3コースを歩いた。「ペリー上陸の地 泊を歩く」では、ガジュマルに囲まれた由緒ある拝所に神秘を感じ、「那覇の市場 迷宮めぐり」ではいくつもあるアーケード街に軒を連ねるソウルフードを知り、「壺屋のツボ やちむん通りとすーじぐゎー(小道)めぐり」では、沖縄の“やちむん(焼き物)”の通りの歴史を学んだ。

 

座間味島 マリン体験資源が豊富 雄大なクジラに感動

 那覇空港から車で約15分、泊港より高速船「クイーン座間味」で阿嘉島を経由し、約50分で座間味港へ到着。大型の「フェリーざまみ」では、約120分の乗船時間だ。座間味島を中心に、有人の阿嘉島、慶留間島で座間味村が構成されている。

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すぐ近くに2頭のクジラが現れカメラを構え

 

本島から日帰りで 訪れる学校も

  座間味港が島内にいる際の集合場所として使用され、目の前に広がる集落「座間味」地区を中心に、「阿真」「阿佐」の3地区に宿泊施設があり、沖縄本島から日帰りでマリン体験を実施する学校もある。観光資源の格付け「ミシュラン・グリーン・ガイド・ジャポン」の2つ星を2009年に獲得。座間味島と阿嘉島の間にある無人島を含む海域は、渡嘉敷島と共に05年11月に、ラムサール条約に登録された。

  体験学習は「古座間味ビーチ」を中心とした体験ダイビングやシュノーケリング、シーカヤック等のマリン体験の他、無人島探検、郷土菓子作り体験、沖縄ならではの野菜や果物を収穫する農業体験等がある。

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サンゴが森のように美しく連なり
感激する

  また、冬期には、繁殖活動で座間味島近海へ訪れるザトウクジラの姿を見るホエールウォッチングも人気(約2時間)。研修会では、座間味村ホエールウォッチング協会の大坪弘和事務局長から、説明パネルを用いた説明を受け、写真家でもある宮城清さんの姫鯨号で沖に出た。鯨がブロウ(潮吹き)する雄大な姿を10回ほど確認した。

ダイバーが守る 約380種の珊瑚

  グラスボートからは、色とりどりの魚、サンゴ礁を見る。座間味ダイビング協会の又吉英夫会長によると、慶良間諸島に生息するサンゴはグレートバリアリーフに匹敵する約380種。同協会は、01年秋頃に大量発生したオニヒトデからサンゴを保全するために設立され、美しい座間味の海を守り続けている。

  渡嘉敷同様に、沖縄本島より先にアメリカ軍が上陸し悲惨な戦場と化したのが座間味島だ。島内を一望する高月山展望台へ行く途中には、集団自決者や軍人約1200余柱の御霊を祀る「平和の塔」が集落をひっそりと見守る。那覇泊港から座間味港へ来る途中に経由する阿嘉島は、慶良間諸島で最初にアメリカ軍が上陸した地。沖縄本島の沖縄戦終焉の地と併せて平和を考える場所に相応しいだろう。 

中国との交易の 重要な中継地

 
 

  阿嘉島には、国の天然記念物に指定されているケラマジカが多数生息。昼は山中に夜は湿地帯に降りてくる。街灯がほとんどない島内を車で散策すると、光る目がポツポツと現れるが、人が近づくと逃げてしまう。また、座間味島同様に阿嘉島にもハブは生息せず、安心して島内観光ができる。

  また、阿嘉島と橋で結ばれた慶留間(げるま)島にある「高良家」は、琉球王朝末期に公用船の船頭職を勤めた仲村渠親雲上が建築。座間味村周辺は、琉球王朝時代に中国へ向かう進貢船の中継地点として重要な場所となっていた。沖縄戦を乗り越え、その姿を今に残す高良家の屋敷を囲む石垣は、「ちぶる石(サザナミサンゴ)」で積んだ特殊な技法が用いられ、通常は南向きにある門が西を向く(首里城を向いている)、貴重な民家。

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1200余柱の御霊を祀る「平和の塔」
「高良家」は特殊な技法の石垣が貴重な民家

 

 

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※学校名、肩書きは当時のものです。

【2011年4月18日号】

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