■受け入れ態勢の飛躍的充実
九州の教育旅行に対する受け入れ態勢の整備・充実のめざましさを感じる。官民が一体となり運営や安全マニュアル、研修、情報や相談窓口・プログラムの提供など、質的充実が図られている。修学旅行は3年間のスパンで積み上げる、一大行事。安全性の確保、教育性の充実、経済性の適正化、学校が求める教育効果。九州には、それらの要素を十分満足させるベースがあると感じる。(高槻市立城南中学校校長・前田 勉)
熊本県■環境・健康・人権・差別を包括的に学習
修学旅行の旅程では通過点でしかなかった水俣を訪れ、語り部から健康被害のことだけでなく、二次的被害の拡がりと、二重三重の苦悩・葛藤があったと聞かされた。我々が報道で知るのは表面だけであって、この現実、認知されていない被害を知る由もなかった。この点において水俣市は環境汚染・健康・人権・差別について包括的に学ばせるのに最適の地。(京都精華女子中学校・高校副校長・森本敏郎)
■過去・現在・未来の環境学習
水俣病資料館、語り部の話から、目をそむけてはいけない事実、いまだに苦しみが続く現実が、ひしひしと伝わる。環境破壊が人間に何をもたらすのかを考えたとき、水俣市がゴミ分別の種別日本一の取り組みを行っていることにしっかり納得がいく。過去・現在・未来とつながる環境学習の場としては、他の地域にはない大きな魅力がある。(草津市立玉川中学校・前田政彦)
■生きた言葉で学ぶ
四大公害病の発生場所とその原因物質については、生徒たちは答えられる状況にあるが、それで終了という現実です。現地に行き、生きた言葉を聞く中で、真の現実、そこに生活するということ、水俣だけではなく日本全国に問題意識を向けられる目を養えるかといったことに、考えさせられればと思う。(奈良市立京西中学校・中村吉男)
■聞いて初めてわかること
語り部の講話では、当時の様子から現在の心情への移り変わりなど、本当に胸を打つ話を短時間で聞かせていただいた。地元でも山側と海側の住民では、水俣病に関する意識の違いなどがあり、話を聞いて初めて感じ取ることができた。岡山からの修学旅行は平和学習・民泊などが中心となりつつあるが、ぜひ環境学習にも取り組んでみたいと思わせる内容であった。(岡山市立御南中学校・難波吉三郎)
■次世代を変える語り部
語り部さんの心の変化が、生徒にも共感できると感じた。何もしないでいて事態が良い方向に進むことはないと気づき、自分の体験を話せるようになり次の世代に正しい姿を伝え周囲の人々の考えや環境を変えていける。福島の原発事故の風評が、事故で傷ついている人々をさらに傷つけている今の状況で、水俣病の学習は大切な事項を学べると考えさせられた。(大阪市立文の里中学校・前田八郎)
■温泉地宿泊の醍醐味
地理の教科書に水俣市の取り組みが掲載されており、社会科教員として関心をもって参加した。語り部・吉永さんのお話からは環境学習にとどまらず、人権教育の視点からも考えさせられることがあった。また、九州旅行の醍醐味は温泉地での宿泊にあると思う。ツイン部屋やユニットバスでは味わえないよさを再認識することができた。(坂出市立岩黒中学校・木野村友美)
宮崎県
■きめ細やかな対応に感激
九州新幹線の全面開通によって南九州の修学旅行がぐっと現実的なものになった。なかでも宮崎への期待度が大きくなったといえる。民泊や農業体験、マリン学習、飫肥城下町の散策や青島などが魅力的な内容であることはもちろんであるが、それよりもまず、リスクマネージメントのきめ細かな対応など、受け入れ態勢の意気込みを感じることができた。(高槻市立第七中学校校長・永尾好輝)
■身近に感じた南九州
南九州は広島から見ても随分遠いところと感じていたが、今回宮崎県が身近なところだと知った。夕食では食の豊かさを実感させられたし、温暖な気候と景観は日頃体験できないものであり、自然を満喫できるなと感じた。また、鹿児島中央駅から広島駅まではさほど時間を要することはなく、改めて南九州が身近であることを実感した。(広島市立戸山中学校教頭・廣森大造)
■大切な仲間・自分の命を守る学習
心配蘇生法やAEDの研修を毎年受けていたが、今回ほど現実味を持って真剣に取り組んだことはなかった。冒頭で視聴した実際のレスキュー現場の映像は、救命救急講習は単なる訓練ではなく、大切な仲間の命を救ったり、自分自身を守るために必要なスキルであることを実感させてくれた。(岡山大学教育学部附属中学校・小山真二)
■現地でしかできない体験
日南海岸でのマリンスポーツ体験の中で、特にライフセーバー体験が印象に残る。「渚の交番」で3つの「間」、「空間・時間・仲間」、それを生徒たちに教えることはとても大事なことであると感じた。実際に海難事故に遭遇した人を救助する場面を生の映像で見て、その後の救命方法を学ぶことはまさに現地でしか体験できないことだ。(早島町立早島中学校・蛭田 享)
■万一の学習に
「渚の交番」でマリンプログラムの解説、デモンストレーションとともに、水難事故の際の救命活動時の映像を見せてもらい、話を聞く機会を得た。学校から離れた場所で、このような機会が得られることはとても貴重である。あってはならないことだが、万が一起こった場合の対処方法について、川や海の危険性も考えて行動できるよう、その対処法を伝えることも教育活動の一環であると考える。(大阪市立長吉六反中学校・小山悠乃)
■「飫肥」で豊かな人間育成を
訪問先の地元の人々との交流を通して豊かな人間性の育成を目指す修学旅行もある。飫肥城下町はその訪問先の一つに該当する。班別行動で歴史や伝統について学ぶと共に、地域の人々とのふれあいを深めさせたい。「食べ歩き・町歩き券」を持って地元のおいしい食べ物や手作りのおみやげを買って町歩きを楽しむのも良い思い出になるだろう。(日本修学旅行協会大阪事務所所長・桝谷利幸)
鹿児島
■平和・命・家族の大切さを学ぶ
知覧特攻平和会館には、中学3年生の年代と近い17歳以上の若い青年が特攻隊員として出撃していった1036名の方々の遺影・遺書・手紙などが展示してあり、事前学習をしっかりしていけば、子どもたちの心に平和の尊さや命の大切さを学ぶと共に、家族の大切さについて改めて考えさせられる施設だと思う。(舞鶴市立城南中学校校長・櫻井秀之)
■日本の近代化を鹿児島で学ぶ
歴史的出来事は、現地で具体的な資料などを見て、初めてわかることがある。仙巌園・尚古集成館では、日本の近代化をリードしてきた薩摩藩、薩英戦争により急がれた近代化、日本初の洋式紡績工場などを学ぶことができる。逆から見れば、鹿児島の人々の先見の明がなければ、今の日本はあったのだろうか。鹿児島市内を、1日乗車券を利用して班別散策にし、ここをチェックポイントにすれば見学しやすい。(堺市立上野芝中学校教頭・山口和宏)
■修旅に必要な要素を兼備
桜島の見学や桜島からフェリーによる鹿児島市内の移動において、やはり自然の雄大さを感じとることができた。桜島、尚古集成館・仙巌園を含む鹿児島市内班別自由散策、平和学習のための知覧特攻平和会館と結び付けていけば充実した内容の組み立てができそうだ。鹿児島県の魅力は私が考える今の修学旅行に必要な「平和学習・班別行動・雄大な自然体験・民泊体験」を兼ね備えていると思う。(奈良市立京西中学校・乾 浩章)
■桜島の力強さと雄大さを生徒にも見せたい
桜島の展望所では、桜島という自然の怖さや力強さを感じ、仙巌園では、雄大な優しい桜島を見ることができ、大変感動しました。その雄大な桜島を生徒たちに見せてあげたいという思いが強くなった。桜島周辺の住民の方の、灰と共に過ごす生活の大変さを知ることができると思う。(神戸市立高取台中学校・西 由紀江)
■「もう一度訪れたい」場所に
高槻では全ての小学校が6年の修学旅行で広島を訪れる。しかし、中学3年生となった時知覧の特攻平和会館では、広島とはまた違った感覚をもつだろう。人としてとても大切なことを再認識できると思う。何よりも九州新幹線が開通したことで修学旅行の幅が格段と広がり、大きくなって「もう一度訪れたい」と感じることのできる場所になるはずだ。(高槻市教育委員会指導主事・岩佐知美)
■平和学習は心して指導を
特攻平和会館は、若者たちの貴い犠牲の上に現在の平和が築かれていることを知らしめる平和学習の教材としては、最適なものの一つ。ただ、あっという間に時間が過ぎ、十分な事前学習の重要性と中途半端な見学時間の設定はできないと感じた。また、特攻隊員に憧れを抱かせたり戦争そのものの美化に繋がることのないよう、心して指導する必要もある。(大阪市立長吉六反中学校・海野優子)
【2013年2月18日号】