京都府北部に位置し日本海に面した舞鶴市は、戦後の海外引き揚げ者を最後まで受け入れた「引き揚げのまち舞鶴」として、引き揚げやシベリア抑留の史実の継承、戦争の悲惨さを次世代に繋ぎ、平和の尊さを発信する取組を続けている。来年は戦後80年を迎える中、市ではこれまでの取組をより一層力を入れる。10月30日には都内にて記者説明会を開催した。
2025年は戦後80年、海外引揚開始80年となり、舞鶴市所蔵のシベリア抑留と引き揚げの貴重な資料がユネスコ世界記憶遺産の登録10周年となる。記者説明会では、鴨田秋津市長自らも登壇。「海とともに発展し、引き揚げ、抑留の史実を後世に伝える舞鶴市について」として市の取組を紹介した。
明治34年(1901年)に、舞鶴鎮守府が開庁し、以来日本海側で唯一の軍港都市として発展した舞鶴市。終戦から13年間にわたって、約66万人の引揚者を温かく迎え入れた。
2015年には市が所蔵する引揚関係資料570点がユネスコ世界記憶遺産(世界の記憶)に登録。2018年には10月7日を「舞鶴引き揚げの日」に制定した。
市では、戦争の史実を語り継ぎ、平和の大切さを伝えるため、市内での教育普及活動に力を入れてきた。「舞鶴引揚記念館」には、小学6年生が「ふるさと学習」として来館するほか、小学校・中学校では、当時引揚者に提供した献立を参考にした「舞鶴引き揚げ給食」を実施するなど、さまざまな取組がある。中学生3人が自主的に「語り部養成講座」に参加したことがきっかけで「学生語り部」が2017年に誕生。現在、中・高・大学生45名が活動している。
また舞鶴工業高等専門学校の学生グループがAI技術を使い、抑留体験者の証言動画と対話ができるプログラム開発を行っている。
鴨田市長は「自らの言葉や技術、知見を活かし、まず自らが関心を高め、史実を人々に伝えていきたいという活動は、舞鶴の希望」と話し、体験者なき戦後を迎える中、「『次世代への継承』から『次世代による継承』へのモデル」としている。
当日は学生語り部で、唯一東京都出身・在住の今野拓実さんも登壇。現在日本大学文理学部史学科3年生に在学中の今野さんは、高校生の時、祖父がシベリア抑留者であったことから興味を持ち、語り部になったこと、実際の活動の様子などを紹介した。
なお舞鶴市は「舞鶴赤れんがパーク」「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」といった観光スポット、「舞鶴かに(R)」や京鰆、マガキといった海の幸にも恵まれている。歴史とともに、数多くの見どころにも注目したい。
◇
東京都内で予定されている展示は次の通り。
▽特別展示「京都舞鶴-世界記憶遺産×日本遺産巡回展in丸の内」
12月23日~26日 於:東京シティアイ パフォーマンスゾーン 入場料無料
▽次世代による継承を考える「ミニ平和未来フォーラム」(仮称)
2025年3月23日 13時30分~16時30分(予定)、於:新宿住友スカイルーム
協力:帰還者たちの記憶ミュージアム(平和祈念展示資料館)。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年11月18日号掲載