関西方面の修学旅行先に、京都市内から車で1時間半ほど足を延ばすだけの舞鶴市は、新たな平和教育の地として注目。市が制定した10月7日「舞鶴引き揚げの日」を中心に、舞鶴引揚記念館や市内の小中学校では祈念式典や特別展示、体験イベントなどを展開。また「学生語り部」の活動も活発だ。
舞鶴引揚記念館は2004年度から、戦争を経験していない世代も対象に「語り部養成講座」を開催。参加者減少で中止となっていた時期もあったが、収蔵資料のユネスコ世界記憶遺産登録を契機に復活。16年度に初めて中学生3人が自主的に参加を希望して来たのをきっかけに17年度、同講座を修了した中学生・高校生などで構成する「学生語り部」が誕生した。
今年度の学生語り部は中学生21名、高校生19名、大学生5名の合計45名が所属。館内の案内ガイドのほか、同館の主催イベントや学習会での紙芝居やゲームの運営進行、修学旅行や平和学習などで訪問する市外の中学校や高校等との交流など、自らの言葉で「シベリア抑留や引き揚げの歴史」を伝える様々な活動を行っている。
舞鶴は日本海に面して位置した大陸からの玄関口であり、終戦後にかけては多くの引き揚げ者でにぎわった歴史の史料は、舞鶴引揚記念館などに収集されている。
終戦の1945(昭和20)年10月7日、韓国・釜山から約2100人の旧陸軍軍人を乗せた引揚船「雲仙丸」が引揚第1船として舞鶴港に入港したのを記念し、18年には舞鶴市が条例で10月7日を「舞鶴引き揚げの日」に制定した。
制定翌年の19年には「舞鶴引き揚げの日」ロゴマークを決定。舞鶴の「マ」の字をモチーフに、波と鶴をイメージし、デザイン化したもので、「引揚船」と「語り部の鐘」(引揚者を迎えた平地区に復元した復元・引揚桟橋の横に設置されている平和を願う鐘)を入れ、いつまでも忘れずに語り継ぐ願いを込めている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年10月21日号掲載