コロナ禍の自粛を経て日常に戻ったと言える教育旅行だが、(公財)全国修学旅行研究協会(全修協)の研究大会では、学校や関係機関がその経験から得た学びを確認する意義があった。7月23日都内で開催された第41回研究大会の「討論」と「総括」から各界の主な発言を抜粋してみた。
学校を代表して栃木県中学校長会前会長・増山孝之氏は「修学旅行(修旅)は学校内外の関係する多くが役割を担うことで実現する教育活動であることを、自粛から再開にかけて実感した。一方で課題も見えてきた」と振り返った。続いて全修協名古屋事務局長・関口大介氏は「修旅は協働、協業と言えるほど、みんなの努力で成立するもの」と同意した。
受け入れ側の旅館を代表して京都・金波棲社長・井上義一氏は「コロナ後の特に急増するインバウンドへの対応、より厳しくなった食の安全性(アレルギー対応食)等の解決が経営につながるのが課題。合理化がサービス低下につながらない研究が大切」と語った。
運営全体を調整する立場から全修協常務理事・岡田俊二氏は今後に向けて「実施時期や行先の分散化、子供たちが自ら考える修旅の在り方」等の検討課題を指摘した。
各界が抱える「コロナ後の諸課題」について前文科省主任視学官・宮崎活志氏は「オーバーツーリズム」「人材不足」「物価高騰」「その他教育問題との関連」という4つの観点から総括。オーバーツーリズムが宿泊施設確保の困難と費用の高騰、移動時間の増大等を生じさせ、交通機関の人材不足やコロナ過が直撃した旅行業界の人手不足等、課題が連なっている。
宮崎氏は今後を展望するうえで「直接体験・探究的学習の機会となる」、「成長期のすべての生徒に旅行体験を保障する」といった修旅の意義を確認。今後の情報技術の発展が修旅にどのように影響するのか予測困難だが、「仮想空間では得られない生きた体験が生徒たちの成長の節目に位置付けられることに変わりはないはずだ」と締めくくった。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年9月23日号掲載