(一社)東北観光推進機構は7月18日、東北6県と新潟県の教育旅行を推進する「2024年度東北教育旅行セミナー(東京会場)」を都内で開催。東京会場のセミナーは今回初めてJR東日本との共催で行われ、昨年立ち上げられた「東北復興ツーリズム推進ネットワーク」の取組について説明。東日本大震災から13年が経過する中、各県からは‘探究学習の宝庫’である東北教育旅行の魅力が紹介された。同セミナーは7月から9月まで、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡で開催されている。
東北観光推進機構の「東北教育旅行セミナー~‘こころ’と‘いのち’の教育旅行・東北まなび旅」は都内で7月18日開催。東北観光推進機構理事長・紺野純一氏は「宿泊代の高騰やドライバーの確保が難しくなるなど問題も起きている。そうした中でも、東北エリアは震災の体験や教訓を学び、復旧・復興に進んだノウハウが蓄積されている他、東北独特の生活スタイルが今も残っている。東北に来て、触れて頂くことが重要だ」と挨拶。
東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道事業本部モビリティ・サービス部門営業業務支援室ユニットリーダー(室長)の峰岸宏治氏は、昨年から展開する、東北における復興ツーリズムの推進を紹介。「連携して震災から復興したことを、若い皆さんが実際に自分の目で見て、将来につなげて欲しい」と語った。
新しい教育プログラムや東北教育旅行での学びの効果、各県の助成制度など東北観光推進機構、東北6県と新潟県、JR東日本が発表した。
東北観光推進機構の市場戦略部チーフ・山口佐和子氏は「物価高騰などの影響で従来の料金での教育旅行の実施が難しくなってきている」と話す。行く先変更を検討する学校も増えているが、東北も物価は高騰しているものの関西や沖縄と比べて緩やかだという。「教育旅行に探究学習の組み込みが重要となる中、東北はさまざまな種類の探究学習が詰まっている‘探究学習の宝庫’。今こそ東北を教育旅行の場として検討して欲しい」と提案。
東北の教育旅行ではまず「震災・減災・防災学習」が挙げられる。東日本大震災の経験から、「語り部」「ホープツーリズム」など多様な学びが用意され、震災遺構なども数多い。また東北ならではの探究学習(SDGsプログラム)に活かせる体験コンテンツも豊富で歴史・文化体験、自然・環境体験、農山漁村体験、スキー体験も。HP「東北まなび旅」には158件にのぼるモデルコース等、各種情報が満載だ。
各県からは特に「探究学習」に重きを置いたプログラムが紹介された。
▽青森県…「伝統文化」「歴史」「自然」「農家民泊」「りんご産業」の5つの体験テーマで学ぶ。スタディツアーとワークショップによる「『深』探究プログラム」を提案。課題設定能力などを育む。
▽岩手県…探究学習は「防災・震災学習」「自然・農山漁村体験」「歴史・文化学習」。広い県内で多種多様な体験が可能だ。
▽宮城県…防災・減災や環境保護・食文化などのSDGs探究学習特化型など117のプログラムを用意。県内の高校や大学と連携したプログラムも。
▽秋田県…「クラスの一体感を高めるチームビルディング」「風力発電施設を軸とした環境学習」の2つの観点から学びを提供する。
▽山形県…旅行の事前学習(問いをたてる)・旅行中の現地学習(答えを導く)・旅行中の事後学習(掘り下げる)として、気づきと学びのある教育旅行を提案。探究学習のテーマは生活体験・果樹園・鷹山公・海洋学習・蔵王の樹氷。
▽福島県…歴史学習・伝統文化体験、自然体験・環境学習、SDGs教育旅行など。世界初の複合災害(地震・津波・原発事故・風評被害)の経験から、「ホープツーリズム」を展開。
▽新潟県…教育旅行ポータルサイト「Egata(イーガタhttps://niigata-kankou.or.jp/ngt/educational_trip/)が今年5月にオープン。モデルコースのほか、教育コンテンツを60以上掲載。
JR東日本が事務局となり、国や自治体・団体・旅行会社・航空会社が官民一体で「東北観光復興ツーリズム推進ネットワーク」が昨年発足。今年4月からは教育旅行で震災伝承施設を訪問する中学生以上の学生団体を対象に、対象列車に割引レートを設定している。
▼詳細=HP「東北まなび旅」https://www.tohokukanko.jp/manabi/index.html
教育家庭新聞 夏休み特別号2024年8月12日号掲載